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タグ: オーディエンス

CGアニメーション

3D-CGの「ルパン三世」が大不評だそうです 私は見てないのでなんとも言えません(初期のころの3D-CGはすり足で歩いていましたが さすがにそんな事はないでしょうね) 漫画のキャラクターを3Dにしたら人形(フィギュア?)になってしまいます 何のためにそんな事をしたのだろう 世界観が変わると思うのですが
「ルパン三世」最初のTVアニメは視聴率が取れず ワンクールも持たず演出が降板しました この時の監督は人形劇の出身で アニメーションの経験がなかったのです[01] … Continue reading その辺も関係してたのかもしれない 原作に忠実に作ろうとしたようです
日本のTVアニメは漫画の原作があります 手塚治虫先生に代表される 非常に動的な作画とコマ割りが 日本の漫画のひとつの特徴です アニメーションにして違和感がない たしか「セーラームーン」などは TVアニメと関連グッズ販売の企画が先にあって それに合わせて雑誌連載の漫画をスタートしたと聞きます

3D-CGのルパン三世は原作者のモンキー・パンチさんが希望したみたいですね 普通アニメーションには原作者が口を挟むことがありません まるで表現の仕方が違いますから リミテッドアニメとフラット画像の制約が ここまでジャパニメーションのクオリティを上げたんじゃないでしょうか[02] … Continue reading
ハリウッドが本編(実写映画)でCGを使ったのは製作費の関係です セットや小道具・衣装その他を実際に作るより安上がりだからです 特撮やオプチカルと同じ扱いなのです ハリウッドの大作はセットじゃなく 実物の街を作ったりしてましたから
CGは新しい表現の可能性があります ただ それがどんなものかまだ分かりません(「チコちゃん」はどうなんだろう 面白い試みだとは思います) 技術先行で安易に3Dを使うと いちじ流行った表情のある等身大 人型ロボットみたいな気味悪さがあります 血が通ってない感がどうしても拭えないのです リアルになればなるほど違和感は残ります[03] … Continue reading

たとえばボストンダイナミクスのロボットは 機能性のリアルさは徹底しています でも本物の質感なんて求めません 「ルパン三世」3D-CGと同じ演出家(「三丁目の夕日」の実写版に携わっていたそうです あの世界観はけっこう好きでした 才能ある方だと思います)が「ドラえもん」の3D-CG版を作っています 何を考えているのか[04] … Continue reading
TVアニメの「ドラえもん」も劣化しています 中国・韓国に外注しているので 日本語がわからないから 動画はいい加減でデタラメです ことに静香ちゃんのキャラが変わってしまった 入浴シーンに文句をつけるのは下衆の勘ぐりというやつです サザエさんにだって入浴シーンは頻繁にあります[05] … Continue reading
いま本編は何分なのでしょう 以前はオープニング・前コマ・中コマ・後コマ・次回予告・エンディング別で 22分程度でした CMが増えているような気がするのですが

2021年4月6日追記=いまや中国の制作会社が 日本のアニメーターを下請外注に使っているのだそうです なんと日本制作アニメーションと比較して3倍の単価だそうです 日本のアニメーターが搾取ともいえる劣悪な条件で仕事をしているのは 以前から問題だったのに放置してきた結果です とくにTV放送は東北新社の件で明らかなように利権の巣窟です こうやって文化面でも中国の侵略を招きました)

私が好きなTVアニメは「じゃりン子チエ」 丁寧に作っている作品です 高畑さんも演出畑の人で絵を描きません でも微妙な表情がちゃんと描けてます 口パクも台詞の言葉に合わせています そこまでやったって誰も見てないのに でもディテールが大切なのです、誰も気が付かなくても全体のクオリティーに影響します[06] … Continue reading

註釈

註釈
01 視聴率って好き嫌いの感情だけですから なかなか捉えどころのない厄介なものです 理屈で狙って取れるものじゃないし 自分の解釈・表現で作っても空回りしてしまいます でも不思議なことに製作側の熱気・熱意といった エモーショナルなものはオーディエンスに伝わります
TV「ルパン三世」最初の監督だった方が お色気のあるシーンが親の反発を受けて 視聴率が低迷したのではないかと言ってたようですが 違うと思います 「八時だよ全員集合」なんか 低俗番組と叩かれても視聴率を取っていました その後の「ルパン三世」にしても ドタバタに路線変更したものの 決して子供向けに作ってはいません
02 ディズニーはライブアクションで 日本のアニメと製作工程が全然違います 実をいえば日本のTVアニメの特徴は 限られた予算と制作日数の中で 試行錯誤して作り出された手法です 限定的な言葉の短歌・俳句や線で表現する絵画の伝統があったから 出来たことかもしれません またそれを受け入れる視聴者がいたのです
03 日本には文楽(人形浄瑠璃)という伝統芸があります その系譜を正しく伝えるのは着ぐるみの人形じゃないでしょうか 共に演者と観客の暗黙の了解のもとに成り立ちます パペットなど他の人形劇と違い 文楽の主遣いなんて丸見えが前提だから正装しています
文楽人形は目と口が動きますが 能の場合顔の表情は面の角度や動きで表します ギリシャ悲劇も仮面劇です もともと神の役を演じるときに仮面をつけました(仮面のことをペルソナといいます パーソナルの語源です) 能も同様で 人間でないものを演ずるため面を用います これも約束事です だから狂言は面なしです
04 アニメーションのキャラは動かすため 原作漫画よりさらに線を簡略化します ミニマルな線で演技させるのがアニメーターの技倆 鉛筆の線一本で表情を作り出すのです(日本の伝統と言えるかもしれません) そのキャラのイメージのまま3D化してるのだろうか これも見てないので分かりません
ドラえもんはそもそもロボットなのだから3D化して 他のキャラは2Dのままなら チコちゃんを超えた異様な世界が広がるかも
本物そっくりではなく 架空の世界を楽しむのが漫画・アニメでしょう 関連グッズも仮想現実のための小道具です (漫画ではないが)江戸川乱歩の仮面の怪人二十面相に登場する 少年探偵団BDバッジからありました
05 内田百閒翁が童話を書いています 扉の序に「この本のお話しには、教訓はなんにも含まれて居りませんから、皆さんは安心して讀んでください。どのお話も、ただ讀んだ通りに受け取ってくださればよろしいのです。それがまた文章の正しい讀み方なのです。」とあります
近松門左衛門の「虚にして虚にあらず 実にして実にあらず 虚実皮膜の間(きょじつひにくのあわい)に芸がある」という言葉も またオーディエンスの受け取り方・見方に委ねるということかと思います
06 原作のルパン三世は子供向けの漫画ではありません お色気満載のピカレスクロマンです 同じ漫画アクション連載のじゃりン子チエも 子供が主人公ながら ヤッちゃんがやたら出てくる 教育に悪い漫画です 
「よい子は真似をしないでください」という必要はない 真似をするのは悪い子なのですから 漫画やアニメーションにしろ 本編・舞台にしろ キャラの設定・構築 人物像の描き方がもっとも大事なことです
子供向けといえど そこは疎かにしてはいけない 憂い顔のチエちゃんに漂う あえかな色気は働く小学生だからです
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ブランディングは一朝一夕にできません

「100日後に死ぬワニ」騒動を引き起こした ベイシカという会社 キャラクター商売のようですが 版権管理とはちょっと違うみたいです ホームページを見ると キャラクターを使ったブランディングを標榜しています 
自慢なのがスピード感 社長インタビューによれば ひとつの案件に1か月しかかけないそうです たしかに「100日後に死ぬワニ」公式グッズショップの開店は 原作終了の翌日という速さです 実態はイベントプロモーターですか
きくちゆうきさんの原作は タイトル通り100日間twitterに連載していました 普通に考えれば 多方面への展開は連載開始前から周到に準備していたと思われます しかし作者によると そうではなくベイシカがコンタクトをとってきたのは 連載開始後1か月経った頃だそうです
おそらく原作の人気に当て込み ひと儲けしようという 山師的発想で原作者に近づいたのでしょう ブームは一過性のものだろうから 今のうちにという感覚です だとしたら 原作者に対して失礼なことですし オーディエンスを愚弄しています この拙速なやっつけ仕事が 嫌悪と反感を呼んだと思います

原作を見たところ 無常観といいますか死は特別なものでなく 日常に遍在するがテーマと私は受け止めました 生きることは即ち 死に向かっての歩みです 今日一日生きたら 死に一日近づくのです
ブランディングは一朝一夕にできません 地道な毎日の積み重ねです お手軽なゆるキャラみたいなものを作れば ブランドのイメージが上がるなんて 安易なものじゃない
キャラクターにも様々あって ストーリーに従い成長するものと安定した存在があります 「100日後に死ぬワニ」はどうなんでしょうか

死んでしまったワニのキャラクターを どうやってマネタイズするのか 今までになかったケースです しばらく沈黙して七七日後に 新たなストーリーが始まるとかすれば面白かったかも スピード感はまったくありませんが 人の噂も七十五日といいます 49日なら忘れられないでしょうし 100日後とも整合性があります

東京と大阪に4月1日からCafeまで開かれるそうです 話題を利用するだけという魂胆が見え透いた この矢継ぎ早のキャンペーンが 今後どのように推移するか注目したいですね 版権管理とかキャラクターを育てるという 長期的視野はまったく持たない連中です 刹那に生きるのも無常といえば無常観かもしれませんが
TVとのタイアップで話題を作り客を呼ぶ手法は 結構うまくいってます 作品のファンであるユーザーでなく 話題性だけで買う浮動層がターゲットなら これはこれで案外成功するかもしれません 以前にも ブログ発の小説を書籍化したりTVドラマ化して 一山当てたというのがありました でもかなり時間をかけていた気がしますけど

このようにtwitterを使ったマーケティングで思い出すのは グルーポンですね あれも日本では光通信という詐欺商法会社(企業舎弟?)が展開していました
本家アメリカでは フラッシュマーケティングと言われていたようで まさに刹那主義の一発屋手法です 期間限定の割引は古典的なものですが twitterを使ったのが目新しかった

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コーラスグループのブランディング

キャンディーズという事象

キャンディーズというコーラスグループがありました 1972年デビューから4年半の活動で自ら解散した 清純な歌声の三人組でした 日本に勢いがあった昭和のノスタルジーとともに記憶に残ります
ブランディングとはファンを作ることです 顧客があって初めてブランドが成り立ちます 解散に向けてファン(顧客)が全面的に応援したところに キャンディーズというブランドの価値があります[01] … Continue reading

キャンディーズは最初アイドルグループとしてデビューしたとはいえ 本格的なコーラスグループでした(むろんポップス・歌謡曲ですから 単純な女声3部合唱ではありません) そしてお笑いトリオ(?)の面も持つ多様性が特徴です 芸能界でも異彩を放つ独自の存在だったのです 昭和という時代が生んだエンターテイナーといえます
キャンディーズの前にキャンディーズなく キャンディーズの後にキャンディーズなし 唯一無二の存在であるから[02] … Continue reading すなわちブランドなのです

キャンディーズの頃

先日のこと YouTubeで他の曲を聴いていたのですが キャンディーズが その曲をカバーしているバージョンがあります 何気なく聴いてみたところ これが驚くほど上手いのです
ほかを探してみたら ザ・ピーナッツの曲を歌ったものが素晴らしい出来です ザ・ピーナッツの歌唱力には定評があります それに伍しているばかりでなく[03] … Continue reading 三人三様の個性を生かしたハーモニーは見事でした 何よりも丁寧に歌っているところに好感が持てます ちゃんと音楽を勉強した上手さです
ライブの録音を聴いてみました 息切れ一つせず 3人のコーラスに乱れはありません バックバンドMMPとの掛け合いも絶妙です 相当のレッスンを積んでいるのでしょう[04] … Continue reading さらに感心したのが 観客に語りかける際のきちんとした言葉使いです 1曲終わる毎に3人揃って 深々とお辞儀するのも自然な仕草ですし 良識を持った人たちですね

現役時代のTV[05] … Continue readingも見ていましたが こうやって改めて視聴してみると 3人が3人とも 気立てが良い素直でピュアな印象の方々です 癖のない歌声も飾らない笑顔も そしてたぶん心根も無垢で真っ直ぐに違いない[06] … Continue reading
コーラスグループのメンバーは 従業員であり自らが商品でもあるという特異な存在です(キャンディーズはレコーディングの際 曲作りにも参加していました 曲冒頭のスキャットは大体3人で考えたらしい 譜面を渡されて歌うだけでないのです キャンディーズサウンドは藤村美樹が作ったと言っていいでしょう) オーディエンス(顧客)を大事にする心構え 商品力を磨きあげる真面目さが伺えます まさにプロフェッショナル精神に徹したエンターテイナーです[07] … Continue reading

当初は渡辺プロダクションの商品であったでしょう キャンディーズというネーミングが示すように マスコット的なキャラでした 人受けのする田中好子をメインボーカルにした アイドルグループとしての仕事に 溌溂と取り組んでいました[08] … Continue reading
それだけでなく 自分たちでキャンディーズというコーラスグループを作り上げる 自覚と自信と自負を持っていたと思います[09] … Continue reading 音楽面では声域の広い藤村美樹が中心となり ハーモニーを支える役割でした 
研鑽を重ねることで グループのカラーが次第に変化するのを見抜き 気負わない歌唱の伊藤蘭をセンターにした判断は プロデューサーの手腕に負うところが大きいですね お姉さんキャラで打ち出した曲が大ヒットしました

3人とも才能はあったにしろ 一人ひとりは美空ひばりや藤圭子のような天才ではなく 際立った個性も持ちません しかしキャンディーズサウンドは唯一のものです 声質が違いながらユニゾンは 一つの声になっています 曲の中で主旋律を交代したり上と下が入れ替わる 多彩なコーラスワークも特徴です この三人でなければ成し遂げられなかった 呼吸(意気)が合っている結束の力によります チームワークと不断の努力[10] … Continue readingで成し遂げた実力ミュージシャンでした
キャンディーズを評価するとき欠かせない観点は スクールメイツ出身であることです 東京音楽学院在籍者から選抜されたのがスクールメイツです キャンディーズはさらに その中からオーディションを経て結成されました[11] … Continue reading 3人は正当な音楽教育を受けた確かな歌い手なのです
身長と体型から3人ともさほど声量はありません 個性を打ち出す歌い方ではなく どちらかというと歌のお姉さん優等生の上手さです それだけに3人のハーモニー(協調性)で楽曲を表現します
そこに音楽表現のダイナミズムが生まれます 活動後半期の「やさしい悪魔」あたりになると 極めて高度なコーラスの完成度を見せます 二十歳そこそこの方々に対して適切ではないのですが 円熟の境地に達しているという感じです 

キャンディーズとブランディング

ブランディングでもっとも大切なのは 従業員の意識の持ちかたと顧客を大切にする姿勢です(コーラスグループでなくても 従業員は最大・最良なメディアです) 社是・社訓ではない マニュアルでもない 数字に表れないエモーショナルなうねりです[12] … Continue reading 従業員の意識が 立ち居振る舞い・言葉の端々表情にも如実に出ます そして顧客に伝わるのです
近ごろは ブランディングを標榜するコンサルタント会社がみられます 以前はやったCIと同じく ブランディングには経営層の承認が必要です コンサルティング会社にとっての客は社長なのです 社長の判子がもらえれば商売は成り立ちます そこから先の従業員やエンドユーザーを考慮する必要はありません 現場を顧みないプランニングは 経営層の受け狙いの御為倒しとなります

キャンディーズは 自分たちの商品特性とライフサイクルを正確に理解していました 一度できたブランドにいつまでも縋らない 最高の状態で解散することを最初から考えていたそうです 自分たちで築き上げたキャンディーズであるからこその決断です[13] … Continue reading
ブランディングとは お客様に商品のファンになっていただくことです キャンディーズには 全キャン連というファンの全国組織まで 自発的に生まれました ファイナルカーニバルに向けてのキャンペーンでは 3人の意志をファンが支えて デビュー以来最大の盛り上がりを見せました

解散の宣言をまず観客に告げたのは しっかりと顧客に向き合っていたことを現します その真摯な姿勢にファンが呼応し共鳴し うねりを生じたのです
こうして今に語り継がれる キャンディーズ1676日の軌跡が生まれました お客様(ファン)とともに物語を紡ぎ出すことが すなわちブランディングです
キャンディーズの自立精神は 所属プロダクションを動かし 顧客は自ら参加し エバンジェリストとなりました 図らずもブランディングの成功事例となったのです

キャンディーズの意識の高さに加え 音楽プロデューサーの力量にも素晴らしいものがありました いま楽曲を振り返ってみると すべて夢見る年頃の おとぎ話のような恋を歌っています 洗練された曇りのないハーモニーが清々しい 3人のイメージを生かした あたかも等身大の日常を思わせます[14] … Continue reading
しかも デビュー時17・8歳〜解散時21・2歳という 少女から大人へ移り変わる 彼女たちの実年齢に合わせるかのように 曲調・内容が少しづつ成長しているのです 当時のことですから むろんブランディングなどという言葉はありません しかしブランドのストーリー作りという意識は持っていたでしょう[15] … Continue reading

註釈

註釈
01 キャンディーズというブランドが成立したのは メンバーである3人の努力だけではありません 事務所の社長・副社長・音楽プロデューサーをはじめ 周りのスタッフの力があったからこそです その上バックバンドであるMMPはもちろん 作詞・作曲の人々も皆3人のファンとなり キャンディーズという事象が起きたのです 顧客とスタッフ そして当の3人たちまでもが キャンディーズの大ファンでした
02 〇〇48であるとか〇〇坂と並べる論調がありますが コーラスのトリオはそれぞれ役割を持ちます 群舞が特徴のグループとは全く別のものです マーケティングの参考にしたのは事実でしょうが 比較する対象ではありません
ただ単に歌の上手いアイドルでは括れない ビジュアルに恵まれたコーラスグループというだけでない やはりキャンディーズとしか言いようがない 本物のエンターティナーです キャンディーズに比肩しうるグループはないでしょう
03 ザ・ピーナッツは声量があります また声質が同じなので ハーモニーに厚みが感じられます キャンディーズのハーモニーは 甘やかな透明感が特徴でしょうか 存在感を示すよりも情感の奥行きがあります
ザ・ピーナッツは けっこうアヴァンギャルドなイメージで売っていたと思います キャンディーズの3人はどちらかというと慎ましい感じです
「ふりむかないで」「恋のバカンス」を聴くと表現の違いが明瞭です デュオとコーラスグループの楽曲の組み立て方か
04 YouTubeに上がっているのは レコードが音源のものも多いですが 40年前の録音なので マルチトラックで音量は調整しても 3人揃っての一発録りだと思います レッスンの様子を録音した音源でも 本当に熱心に歌・コーラスワークと取り組んでいます 映像を見ていて気づいたのですが どんな振りでも体軸がぶれていない 発声の基礎がしっかりしているからです
ライブの音源を時系列で聞くと 初期の頃も下手ではないのですが わずか4年の間の成長ぶりは目を見張るものがあります これにはMMPとの出会いが大きかったと思われます MMPの参加で圧倒的なドライブ感(というのかな)が加わった感じを受けます MMPはキャンディーズの音楽性をサポートするにとどまらず キャンディーズのファンであったでしょう まさにコラボレーションです
05 昭和の歌手は TVの歌番組でも生演奏で歌っていました(下手はいつの時代にもいて いわゆる口パクもありましたが) キャンディーズの場合アイドルグループということで 振り付きです なのにライブで歌ってレコード音源と差がない しかも生演奏・生歌に加えて 振りではマイクのコードさばきが必要な時代です 大した実力です 「恋のあやつり人形」の人形振りなど かなり体力を使うのに 安定した歌いぶりを見せます 音合わせの時でも必ず振りをつけていたそうです エンターテインメントとして楽曲と一体なのです
06 3人は他人同士ですから 容貌も違えば個性もそれぞれです しかしどこか共通した雰囲気を持っています だからこよなく気が合ったのでしょうが 3人の仲のよさは生涯続くことになります 偶然とは思えない出会いです
3人の歌声を例えるなら 天(ラン)地(ミキ)人(スー)ではないでしょうか 愛嬌と親しみの田中好子 どこか浮揚感のある伊藤蘭 コーラスを支える藤村美樹 というところです 人柄では ミキは天然だがしっかりしている ランは文学少女ながら気配りできる スーはムードメーカーの甘えん坊 3人に共通するのは 素直で真っ直ぐ一途なところです そして何よりも仲の良さ これが楽曲に表れています
07 キャンディーズはバラエティ番組にも躊躇なく 難しい歌をさらりと歌いこなし どんな衣装も着こなしてみせますね 比較的おとなしい衣装が多かったが 大胆なものもありました(網タイツ姿でも なぜか気品と清純さを失わない) 本格的なコーラスグループとして歌を届けるのと何ら変わらない オーディエンスを愉しませるプロ意識のなせることです
08 40年も前の話です TVが元気な頃でした キャンディーズもレギュラーだった『8時だョ!全員集合』は 視聴率が常時30%を超えていたと思います(占拠率の数字は覚えていませんが あの頃は全家庭がTVをつけてましたね) ザ・ドリフターズのコントは 緻密な計算のもとに成り立っていました
ザ・ドリフターズはバンド(冗談音楽)として始まりました 言葉よりも動きの笑いです コーラスグループであるキャンディーズが コントに取り組むこと間のとり方がうまいのも エンターテイナーとして共通点があるのかも知れません
09 ある歌番組で伊藤蘭が病欠したことがあります 残りの藤村美樹と田中好子は出演したものの 新曲を歌うことはありませんでした(ア・カペラで歌い出し部分だけ紹介しましたが) その新曲「春一番」は3人揃ってのフルコーラスでした ほとんどユニゾンの曲です コーラスグループとしての矜持を保ったのだと思います おそらく彼女たちの意志だったでしょう(仲のよさの表れでもあります)
10 3人は天与の才能というより 努力の人たちであったと思います キャンディーズである間は「普通の女の子」の生活を求めない という決意で限界まで突き進んだのは想像に難くない 「ここまで全力で走ってきましたから(解散するのは)まったく悔いがありません」と言い切ってましたね 目標に向かって努力するのも才能の一つです
11 最初はNHKの番組「歌謡グランドショー」のマスコットガールとして採用された3人です キャンディーズというグループ名もこのときに付けられました オーディションというのは番組出演時のことでしょう
ハリウッド映画はプロデューサー・システムなので 出演者もスタッフもオーディションを受けなければなりません オファーの仕事なんてごく一握りの人です NHKも番組制作はプロデューサーが全権を持っていて オーディションがあります(いちど合格すれば他の番組にも出られますが)
ナベプロとしては最初から この3人をグループで売るつもりだったと思います スクールメイツ時代から大変仲がよく いつも3人一緒だったようで ♪なぜか気が合うて別れられぬ まさに同期の櫻でした
12 以前ボーカルが加わったジャムセッションを聞いたとき ジャズボーカルは楽器の一つなんだなと感じました その線上にスキャットがあるのではないでしょうか
コーラスグループも同じ気がします バックバンドとの呼吸が重要ですし 一方で実力のある歌い手ならア・カペラも成立します 歌も他の楽器と同等のパートなのです
13 3人が東京音楽学院に入学したのは1969年から1970年 キャンディーズとしてデビューしたのが1972年 レコードデビュー1973年ですから 2〜3年間音楽の勉強をしてきたわけです デビューしてから3年間は全力で頑張ると決めたのも そのへんから来ているのでしょうか
中学生から6・7年間 青春のすべてを音楽に捧げてきたのです 「普通の女の子(の生活)に戻りたい」は 彼女たちの切実な気持ちが吐露された言葉です 今と違う生活に憧れる若い時期はあります 普通の感覚を持って自分の人生と真剣に向き合っていたということです
14 「ロマンチストな私ラン ちょっとボーイッシュなミキ ちょっぴりセンチなスー」という惹句が示す それぞれのキャラクターに ファンは自分の思いを仮託します 際立つ個性がない3人は イメージが抽象化した面があります 当時のファンも節度を保ち ナイトを任じていたかのようです ほどよい距離感を持ち 身近なようでいて 現実にはない世界観を形作ることになります
15 はじめの頃のコンサートでは ミュージカル仕立てのキャンディーズ物語といった寸劇をやっていました 内容はキャンプ場で知り合った3人が 歌手になるためオーディションを受けるが 一人が間に合わなかったみたいな アイドルにありがちなものです(実際に藤村美樹は1年遅れで東京音楽学院に入学しています) これが本格的な歌唱力を身につけるに連れ コーラスグループとしてのストーリーとなっていった
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