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年の功より亀の甲

若年寄 老中 家老 江戸時代の役職名です 主君を補佐し実務を担当する役割です 老と付いても 老人がなるものではありません 働き盛りの仕事です
この老は年老いたという意味ではなく 研鑽を重ね経験を積んだ 確固たる判断力を持つ大人を表します 経験を重視した言葉ですから実年齢は関係ない

このごろ年寄役(大人)を演じられる俳優がいない気がします とくに重厚な役ができない 年を取った役者はいくらでもいるものの 人間の重みを感じられないのです 年齢相応の存在感がない 経験が身に付いてないのではと思います
老成といいますが ただ徒に年齢を重ねても 人間成長しません 東京物語で父親役をやったとき 笠智衆は二十代でした これは演技力でしょうか 演技力もなければ磊落とも飄逸とも違う 大人の風格を持たない役者なら 仕方ないことです[01] … Continue reading

鶴は千年亀は万年といえ 亀の偉さは長生きだからじゃない 兎と亀 努力を惜しまず我が道を行く堅実な生き方です 他人の生き方を真似しても始まらない 信念を曲げないことです 要領よく生きようとしない愚直な歩み 経験値で鎧おわれていきます
小狡い生き方は論外ですが 目端が利くだけの器用な世渡りはその場限り また慢心は油断を生みます 堅固に己を全うすれば 周りを気にしたり 世間を窺う必要もない

器量の大きさは様々でも 自ら築いた甲羅に応じて役に立つ 年数ではなくその人の生き方が経験値をもたらします
経験値といっても 実際は数値で表すことはできません 無形の甲羅の力です 経験もただ漫然と実務に携わって 職歴が長いだけで培われるわけじゃない[02] … Continue reading

実力が分からないから 学歴等で判断します(この風潮は現在でもあります 妙に年齢を気にするのも同じなのかもしれない) 老中などの役職は譜代から選ばれます 譜代は過去に功績のあった家ですから 一種の経歴ですね
一方で有能であれば家格の低い者が 重要な職に取り立てられる例もたくさんあります 平常時ではなく何か問題のあるときです また功績があっても一代限りがほとんどです 旧来の地位にいる者からの嫌がらせ・妨害も多かったようです

幕末に井伊直弼が大老になりました 井伊家は関ヶ原の戦い以来の名門です でも大した働きはできなかった これも名門である徳川斉昭との軋轢に終始していました(短慮なのは井伊の家系かもしれない?)
幕末で最も目覚ましい働きを見せたのは 小普請組(無役)の勝海舟だと思います 小栗上野介のような高級官僚能吏ではない 佐久間象山(縁戚)ほど怪異な人間とも違う 江戸の洒落っ気を装った ちょっと捉えどころのない人物です

役者だけでない 政治家も疑問符がつくような軽い人間ばかり 内憂外患いまの日本は非常時です 麻生太郎や森喜朗のような者共が跋扈しては 国に仇なします この国難を救う人物が現れないと 日本は滅びます

註釈

註釈
01 もうお年ですが 仲代達矢さんの存在感は凄味がありました つまらん映画に出ておられたことがありますが 仲代さんの出演シーンになると とたんに場面が引き締まるのです そのシーンだけが映画として成立していました 登場するだけで只ならぬ臨場感が漂う 何と言うかもはや演技を超越しています
02 先日のこと 高価な古酒を飲んでみました 濃醇ではなく仄かな熟成香が感じられます 年月でしか作れない捌けた枯淡の味わい しかし筋の通った峻厳な力強さは失っていません
保存状態の悪い古い吟醸酒を飲んだこともあります 老香と熟成香は紙一重です 老醜を晒すは嫌ですね せめて古酒ほどの存在感のある老人になれれば と思った次第です

カテゴリー: 情報戦・心理戦一般 日本の伝統・本流