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タグ: 流通

パッケージとインフォメーション

牛肉弁当

駅弁のTV番組を見ました 岩手県沼宮内 肉のふがねが新しく作った弁当「岩手短角牛やわらか煮弁当」を 修業した店の親方に試食してもらうというシチュエーションでした (この弁当は駅弁といっても 岩手県「道の駅石神の丘」で売っているものです)
そのシーンで なぜか親方は試食の前に しきりとパッケージデザイン(蓋の部分)を見ているのです

黒バックで ほとんど書き文字だけで構成されたものです
「岩手短角牛」の文字と 「やわらか煮弁当」の文字 そしてもう1つ(よく覚えていませんが ホームページで確認してみると「脂身が少なくてやわらかい」だったかもしれません)の文字がすべて同じ大きさで 客に何を伝えたいのかよくわからないと批評したのです
若い店主は味の評価を聞きたかったのでしょうから 釈然としない表情でした

ちゃんとした料理人に 美的感覚は欠かせません 盛り付けにしても メニューや店の内装にも その人の料理にふさわしいセンスが必要です 親方が まずパッケージを見たのは当然のことです この弁当を食べてもらいたい という気持ちが表されていなければならないのです(ブランディングのひとつです)

おそらく肉のふがねが太鼓判を押す牛肉なのでしょう その名の通り岩手短角牛を柔らかく煮込んで 肉の食感を残すため手で裂いて仕上げたものだそうです 丁寧に手づくりしていて 画像を見る限りなかなか旨そうな弁当です
言いたいことはよく分かるのです もうひとつ知名度がない「岩手短角牛」のおいしさを知ってもらいたい 肉屋が作った 牛肉柔らか煮の味には絶対の自信がある 霜降りの牛肉ばかりありがたがるが 牛の本当の旨味は赤身にあること そのすべてを伝えたいから 大きい文字にしてしまう よくあることなのです 自分の気持ちが先行して かえってお客様に伝わらないこと 自分の思いとお客様が求めることのズレは

私だったら メインに「牛肉やわらか煮弁当」として そこにかぶせるように「手割き仕立て」と入れます その下に遠目からは読めないくらいの文字で 「肉のふがねが 岩手短角牛のおいしさを知ってもらいたくて このお弁当を作りました 柔らかく煮上げた牛肉の食感を味わえるように 牛肉の繊維にそって手で割いて仕上げています ていねいに作った味を じっくりと噛み締めてみてください」としたでしょう
一見 文字数が多すぎるように見えます でも パッケージはインフォメーションであるべきだと思うんです 明確なメッセージが必要だと思います

ホームページもコンテンツが命です ビジュアルじゃない

2023年9月30日追記=靖国神社前に海苔弁専門店があります 最近できた店ですが 高級海苔弁でなかなか繁盛しています 売れているのは明確なコンセプトのもとに プロデュースされているからです
とくにパッケージがよい 上質な紙製で程々の高級感がある 蓋を開けると内側に食材の説明が書いてあります つまりパッケージを使ったメッセージです パッケージが最大のオウンドメディアであることを分かっています)

A5ランクの牛肉?

牛肉というと A5ランクがもてはやされます これは枝肉[01] … Continue readingに対する格付けで 1〜5はサシの入り具合(カラーチャートで見ます) ABCは歩留まり つまり重量に対し肉として売れる部分の割合がどれだけあるかで 枝肉の値段が決まります
サシがたくさん入ったピンクの霜降り肉(霜降り・鹿の子という言い方は昔からありました)で クズ肉になるところが少なければ その枝肉は高値で取引きされるのです 成り行きとして精肉の小売価格も高くなります 肉質や食味は関係ありません(クズ肉は蛋白加水分解物〈魔法の粉〉として利用されています)

このランク付けは神戸牛のセリから始まったようです 上記の赤身肉は岩手です 同じく米沢牛も高い評価があります ともに神戸・松坂等の銘柄牛と比べてあまり高値で取引されません
肉質・食味は良いのですが 流通経路の関係で付加価値がつけられないためです(1〜5の数字はサシの入り具合なので 赤身肉はランクが低くなってしまいます)
とくに関西方面の牛肉の流通は利権団体(同和)に牛耳られています それが高値の原因です 岩手や米沢には同和が入り込んでいないため 安い(適正価格?)のです

牛肉は 高いから高級品 高級だからうまい とはならない いびつな流通が値を釣り上げているだけです

註釈

註釈
01 昔の肉屋さんは奥に大きな冷蔵庫があって レールに枝肉を吊るしていました ロース肉をくださいとかいって注文すると ガラガラと引き出してきて ブッチャーナイフで叩き切るところから始めていました
たぶん自店で熟成していたと思います(肉の熟成は枝肉でやるものです) 今はブロック肉で流通しているみたいですね だから5段階表示はまだしもABCはまったく無意味です ブロック肉にカビをはやして 熟成肉だなんていってるのも出てきました
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講談社「死ねばいいのに」

聞くところによれば 京極夏彦氏はMacで原稿を執筆し なんとInDesignで組版までして出稿しているという 昔は原稿を出版社に渡せば戻ってくることはなかったが デジタルならばデータは自分の元に残る
InDesignにはepubで保存する機能があるから その気になればいつでも アマゾンやアップルと直接契約して出版できることになる もっとも現段階では どちらも日本語に対応していないので無理だが
iBookストアが開店する前に 講談社がこのような行動に出たのは そうとう焦っている証拠であろう あからさまな著作者囲い込みに走り始めたわけだ 京極氏にしても いま講談社を敵に回すことはできないから 呑んだのだろうが

再販制度は著作権者を守るわけではない 出版権という出版社の既得権益を守るだけのものである 新古書店を取り込むことはできたが アップルやアマゾン相手ではそうはいかない
いま日本の出版業界は流通を独占すること 再販制で利益を確保することしか考えていない
取次から書店への請求書は1か月に2回来る しかも勝手に配本してきた本の請求である 全くの押し込み販売がまかり通っている そして 取次から出版社への支払いは 年に2回となっている
この 日本の書籍・雑誌の流通を牛耳る取次は 大手出版社が株主である 電子書籍コンソーシアムとやらも たぶん同じメンバーだろう

出版は 雑誌連載で儲け 単行本にして儲け 文庫本化して儲けと 1つのネタで3番煎じまでできる それでも昔は その度に版を組み直していたので 文庫本になる頃なら まず誤字脱字なんかなかった[01] … Continue reading
いまはデータの使い回しだ そのため時間に余裕がなく ろくに校正もしない雑誌連載のテキストデータが 文庫本にまで使われる これに電子出版を加えて さらに儲けようとしているだけの発想だ
本当に「死ねばいいの…」は 日本の出版流通ではないか

註釈

註釈
01 川端康成が雪国を書くのに 何度も書き直しているという話があるが 別に川端康成に限らず古の小説出版はそんな書き方だった 雪国の温泉宿に何度も通い長逗留して草稿を書く 推敲・ゲラ校して雑誌に短編として連載する 後にこれらを纏め長編として単行本を出す 昔はデータの使い回しじゃないので 新たに活字で版を組み著者校正に回す 著者による朱が入るが ことに短編をつなげて長編にするには 章を入れ替えたり書き直すことが多くなる 文庫本はまた別の契約で再び版を組む この時の著者校でかなりの朱が入る場合がある 書き直す機会が多かったため そうなったまでのこと(作者によっては自分の手を離れた原稿に手を加えない人もいた)
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