温泉、銭湯、風呂の温度

東の草津 西の有馬 古くからある湯治場は熱湯(あつゆ)が特徴です 温熱による治療効果を求めていたのです
温泉には薬効もありますが 普段の湯でも上がって身体が赤くなってないようでは 湯に入る意味がない1)湯に入ることと体を洗うのは全く別の行為です 洗うだけならシャワーで充分湯に浸かる必要はない 温泉に入って石鹸で体を洗っては何にもなりません 温泉成分による薬効も温熱でさらに高まります 湯を浴びる湯に浸かるのは 体を洗うのが目的ではない

江戸っ子が熱い湯に入ったのは ヤセ我慢していただけではありません 湯温と水圧で体表面に刺激を与え 新陳代謝をはかるのです2)夏に熱い湯へさっと入ると(烏の行水)汗が引いてさっぱりするのは 気のせいだけじゃない 極寒のフィンランドでサウナ風呂に入って 冷たい湖に飛び込むのと同じと見ればいい 人体の恒常性をうまく使っています
江戸っ子の坊ちゃん(夏目漱石)が通った 道後温泉本館が建てられたのは ちょうど20世紀が始まるときでした 「猫」にもこの新世紀という言葉がよく出てきます 当時は新築の建物だったのです 古典落語や漢籍に精通していた漱石ですが けっこう新しもの好きのハイカラ趣味だったようです

お風呂の適温が42℃とされるのは 公衆浴場法の都道府県条例で銭湯の湯温が42℃以上と定められていたことに由来します 体温計の目盛りが42℃までなのはなぜか 人間の体温が42℃以上になることがないからです3)体力のある病人が死の直前に 体温調節ができず高温になることはあります 平清盛がアッチ死にしたとき 体を冷やそうと水をかけたら 蒸発してしまったという記述は あながち大げさではないのです
細菌に感染したりして発熱するのは 人体の防御反応(免疫)です 細菌も42℃の高温では繁殖できないからです つまりは人体が熱を出している 自然の温熱療法といえるわけです

発熱は人体と細菌のせめぎ合いです 体力を消耗しますから 熱が下がったときは安静にする必要があります また人体には恒常性があり 環境に応じて体温を一定に保つ働きがあります 長湯したら体が芯から温まるなんてことはない
外気温のセンサーは盆の窪あたりにあります4)殺気や人の気配も首筋で感じるものです 背筋・首筋がゾクゾクするというのも 比喩だけの表現ではありません 皮膚感覚は案外と鋭敏で大切なものです
アナログレコードの音がCDより豊かに聞こえるのは 人間の耳で聞き取れないとされる高音域と低音域を含むからです 耳で聞くだけでない皮膚で感じる音があります
 だから寒いときにマフラーをすると暖かく感じるのです 暑いとき首筋に氷を当てたりすると 外気温が低いと勘違いして体温調節の機能が狂い 熱中症になります

ずいぶん前 一日30品目の食材を摂取するのが健康にいいという話が 厚生省だったかによって まことしやかに流布されました 今ごろあれは何の根拠もなかったと取り消したそうです
ポイントは30品目という数字ですね いかにももっともらしくて 数字が一人歩きします スーパーマーケットのキュッパー価格や セット価格1000円ポッキリみたいなものです

お風呂の適温42℃も似たようなものです 本来細菌の繁殖を防ぐための目安だったのが 数字だけが一人歩きし 医学的根拠も曖昧なまま いつの間にか適温とされました
近年では ぬる湯で長時間の入浴がよいとの風潮が広まり 公衆浴場法が改変され42℃以下の設定が主流です そのために38℃から42℃の範囲で繁殖しやすい レジオネラ菌の被害が相次ぐようになりました
人間の身体は基本的に冷やしてはいけません 湯冷めするようなぬるま湯は 身体のためにもよくないと思います5)さる酒造会社の会長が 醸造試験場の技師と共に燗酒と温度の関係を実験してみたそうです 15℃の酒を35℃に燗をし唎き酒しました 温燗のちょい手前人肌燗ですね 50℃の湯で4分30秒温めたものがよく 次によいのが97℃の湯で1分40秒 よろしくないのが35℃の湯で17分30秒でした なにか示唆的ですね

徳川秀忠が毎日 熱海の湯を千代田城まで運ばせていたといいます6)江戸の湯屋(銭湯)は半蒸し風呂でした ご承知のように江戸は埋立地で水が悪い 飲料水は玉川上水等の水道が頼りでした また燃料の薪も薪炭屋から購入するものでした(銭湯は廃材等を使ったでしょうが) 水と燃料を節約するため半蒸し風呂だったのです 豊富に湯が溢れる温泉は最高の贅沢だったでしょう 今でも災害時には自衛隊が仮設風呂を設置しますね 15時間かけたそうです テレビ番組で 源泉の湯を樽に密封し菰をかけて保温 15時間おいて温度を測ったら 90℃の源泉が60℃まで下がっていたとか あまり冷めないものです これを大奥か中奥に運んで 風呂桶に汲み入れれば 入浴には充分すぎるほどの温度です
日常でも電子レンジで温めたものは すぐ冷めるのを経験します 地熱はそれこそ何万年もの時間をかけて温められたものです 温泉の湯そのものが冷めにくく また温泉に入ると湯冷めしないのは当然でしょう

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1. 湯に入ることと体を洗うのは全く別の行為です 洗うだけならシャワーで充分湯に浸かる必要はない 温泉に入って石鹸で体を洗っては何にもなりません 温泉成分による薬効も温熱でさらに高まります
2. 夏に熱い湯へさっと入ると(烏の行水)汗が引いてさっぱりするのは 気のせいだけじゃない 極寒のフィンランドでサウナ風呂に入って 冷たい湖に飛び込むのと同じと見ればいい 人体の恒常性をうまく使っています
3. 体力のある病人が死の直前に 体温調節ができず高温になることはあります 平清盛がアッチ死にしたとき 体を冷やそうと水をかけたら 蒸発してしまったという記述は あながち大げさではないのです
4. 殺気や人の気配も首筋で感じるものです 背筋・首筋がゾクゾクするというのも 比喩だけの表現ではありません 皮膚感覚は案外と鋭敏で大切なものです
アナログレコードの音がCDより豊かに聞こえるのは 人間の耳で聞き取れないとされる高音域と低音域を含むからです 耳で聞くだけでない皮膚で感じる音があります
5. さる酒造会社の会長が 醸造試験場の技師と共に燗酒と温度の関係を実験してみたそうです 15℃の酒を35℃に燗をし唎き酒しました 温燗のちょい手前人肌燗ですね 50℃の湯で4分30秒温めたものがよく 次によいのが97℃の湯で1分40秒 よろしくないのが35℃の湯で17分30秒でした なにか示唆的ですね
6. 江戸の湯屋(銭湯)は半蒸し風呂でした ご承知のように江戸は埋立地で水が悪い 飲料水は玉川上水等の水道が頼りでした また燃料の薪も薪炭屋から購入するものでした(銭湯は廃材等を使ったでしょうが) 水と燃料を節約するため半蒸し風呂だったのです 豊富に湯が溢れる温泉は最高の贅沢だったでしょう 今でも災害時には自衛隊が仮設風呂を設置しますね