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流れに棹さす?

「流れに棹さす」の出典が分かりません 用例も見たことないが慣用句ということでしょうか ならば揚げ足取りは無用なのですが
小型の川船が桟橋から離れるときは 水棹を突いて動かします 瀬に至れば櫓を入れて漕ぎます 渡しなどで川を横切る場合は 川上に向かって斜めに船を進めるのが決まり 時代劇でおなじみのシーンです
石松三十石船の古い映画があります この三十石船は淀川を伏見に向けて上ります 石松と江戸っ子のやり取りの間に 水棹を押しながら舳から艫へ 船縁を歩く姿が見られます 流れを遡るときは棹で水底を突いて進むのです
下りのときは櫓を入れて流れに乗ります 浅瀬を下るときも水棹を使いますが これは岩などにぶつからないよう むしろ減速のためです
船を人力で動かす道具は ほかに櫂があります 日本の川は幅が狭く急流が多いので 軍船の安宅船以外には ほとんど使われません
櫂→櫓→水棹の順で難易度が高くなっていくそうです たしかに棹一本で船を操るのは難しいことでしょう 舵のない川船は操船のため棹を使うことはあっても 船脚を早めるため棹で水底を突くことはしません
「流れに棹」だったら棹を用いて流れに向かうと 流れを見極めて棹で操船するの ふたつの意味がありそうです なので流れに逆らうも誤用とは言い切れません
文化庁のページを見ても「流れに棹さす」の用例は見当たらないし 水を差すと間違えている人はたぶんいないと思う 時流に乗るという意味で使いたいならば 追風に帆かけてシュラシュシュシュの方がいい 石松が乗った金毘羅船は百石積の内海用なので 帆掛け船です
もしかしたら夏目漱石「草枕」の冒頭 情に棹させば流される から来ているのでしょうか これは情に流されると流れに棹を引っ掛けた言い方で 情にほだされるといった意味合いです 流されるのであって流れに乗るということではない

カテゴリー: 情報戦・心理戦一般