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コーラスグループのブランディング

キャンディーズという事象

キャンディーズというコーラスグループがありました 1972年デビューから4年半の活動で自ら解散した 清純な歌声の三人組でした 日本に勢いがあった昭和のノスタルジーとともに記憶に残ります
ブランディングとはファンを作ることです 顧客があって初めてブランドが成り立ちます 解散に向けてファン(顧客)が全面的に応援したところに キャンディーズというブランドの価値があります[01] … Continue reading

キャンディーズは最初アイドルグループとしてデビューしたとはいえ 本格的なコーラスグループでした(むろんポップス・歌謡曲ですから 単純な女声3部合唱ではありません) そしてお笑いトリオ(?)の面も持つ多様性が特徴です 芸能界でも異彩を放つ独自の存在だったのです 昭和という時代が生んだエンターテイナーといえます
キャンディーズの前にキャンディーズなく キャンディーズの後にキャンディーズなし 唯一無二の存在であるから[02] … Continue reading すなわちブランドなのです

キャンディーズの頃

先日のこと YouTubeで他の曲を聴いていたのですが キャンディーズが その曲をカバーしているバージョンがあります 何気なく聴いてみたところ これが驚くほど上手いのです
ほかを探してみたら ザ・ピーナッツの曲を歌ったものが素晴らしい出来です ザ・ピーナッツの歌唱力には定評があります それに伍しているばかりでなく[03] … Continue reading 三人三様の個性を生かしたハーモニーは見事でした 何よりも丁寧に歌っているところに好感が持てます ちゃんと音楽を勉強した上手さです
ライブの録音を聴いてみました 息切れ一つせず 3人のコーラスに乱れはありません バックバンドMMPとの掛け合いも絶妙です 相当のレッスンを積んでいるのでしょう[04] … Continue reading さらに感心したのが 観客に語りかける際のきちんとした言葉使いです 1曲終わる毎に3人揃って 深々とお辞儀するのも自然な仕草ですし 良識を持った人たちですね

現役時代のTV[05] … Continue readingも見ていましたが こうやって改めて視聴してみると 3人が3人とも 気立てが良い素直でピュアな印象の方々です 癖のない歌声も飾らない笑顔も そしてたぶん心根も無垢で真っ直ぐに違いない[06] … Continue reading
コーラスグループのメンバーは 従業員であり自らが商品でもあるという特異な存在です(キャンディーズはレコーディングの際 曲作りにも参加していました 曲冒頭のスキャットは大体3人で考えたらしい 譜面を渡されて歌うだけでないのです キャンディーズサウンドは藤村美樹が作ったと言っていいでしょう) オーディエンス(顧客)を大事にする心構え 商品力を磨きあげる真面目さが伺えます まさにプロフェッショナル精神に徹したエンターテイナーです[07] … Continue reading

当初は渡辺プロダクションの商品であったでしょう キャンディーズというネーミングが示すように マスコット的なキャラでした 人受けのする田中好子をメインボーカルにした アイドルグループとしての仕事に 溌溂と取り組んでいました[08] … Continue reading
それだけでなく 自分たちでキャンディーズというコーラスグループを作り上げる 自覚と自信と自負を持っていたと思います[09] … Continue reading 音楽面では声域の広い藤村美樹が中心となり ハーモニーを支える役割でした 
研鑽を重ねることで グループのカラーが次第に変化するのを見抜き 気負わない歌唱の伊藤蘭をセンターにした判断は プロデューサーの手腕に負うところが大きいですね お姉さんキャラで打ち出した曲が大ヒットしました

3人とも才能はあったにしろ 一人ひとりは美空ひばりや藤圭子のような天才ではなく 際立った個性も持ちません しかしキャンディーズサウンドは唯一のものです 声質が違いながらユニゾンは 一つの声になっています 曲の中で主旋律を交代したり上と下が入れ替わる 多彩なコーラスワークも特徴です この三人でなければ成し遂げられなかった 呼吸(意気)が合っている結束の力によります チームワークと不断の努力[10] … Continue readingで成し遂げた実力ミュージシャンでした
キャンディーズを評価するとき欠かせない観点は スクールメイツ出身であることです 東京音楽学院在籍者から選抜されたのがスクールメイツです キャンディーズはさらに その中からオーディションを経て結成されました[11] … Continue reading 3人は正当な音楽教育を受けた確かな歌い手なのです
身長と体型から3人ともさほど声量はありません 個性を打ち出す歌い方ではなく どちらかというと歌のお姉さん優等生の上手さです それだけに3人のハーモニー(協調性)で楽曲を表現します
そこに音楽表現のダイナミズムが生まれます 活動後半期の「やさしい悪魔」あたりになると 極めて高度なコーラスの完成度を見せます 二十歳そこそこの方々に対して適切ではないのですが 円熟の境地に達しているという感じです 

キャンディーズとブランディング

ブランディングでもっとも大切なのは 従業員の意識の持ちかたと顧客を大切にする姿勢です(コーラスグループでなくても 従業員は最大・最良なメディアです) 社是・社訓ではない マニュアルでもない 数字に表れないエモーショナルなうねりです[12] … Continue reading 従業員の意識が 立ち居振る舞い・言葉の端々表情にも如実に出ます そして顧客に伝わるのです
近ごろは ブランディングを標榜するコンサルタント会社がみられます 以前はやったCIと同じく ブランディングには経営層の承認が必要です コンサルティング会社にとっての客は社長なのです 社長の判子がもらえれば商売は成り立ちます そこから先の従業員やエンドユーザーを考慮する必要はありません 現場を顧みないプランニングは 経営層の受け狙いの御為倒しとなります

キャンディーズは 自分たちの商品特性とライフサイクルを正確に理解していました 一度できたブランドにいつまでも縋らない 最高の状態で解散することを最初から考えていたそうです 自分たちで築き上げたキャンディーズであるからこその決断です[13] … Continue reading
ブランディングとは お客様に商品のファンになっていただくことです キャンディーズには 全キャン連というファンの全国組織まで 自発的に生まれました ファイナルカーニバルに向けてのキャンペーンでは 3人の意志をファンが支えて デビュー以来最大の盛り上がりを見せました

解散の宣言をまず観客に告げたのは しっかりと顧客に向き合っていたことを現します その真摯な姿勢にファンが呼応し共鳴し うねりを生じたのです
こうして今に語り継がれる キャンディーズ1676日の軌跡が生まれました お客様(ファン)とともに物語を紡ぎ出すことが すなわちブランディングです
キャンディーズの自立精神は 所属プロダクションを動かし 顧客は自ら参加し エバンジェリストとなりました 図らずもブランディングの成功事例となったのです

キャンディーズの意識の高さに加え 音楽プロデューサーの力量にも素晴らしいものがありました いま楽曲を振り返ってみると すべて夢見る年頃の おとぎ話のような恋を歌っています 洗練された曇りのないハーモニーが清々しい 3人のイメージを生かした あたかも等身大の日常を思わせます[14] … Continue reading
しかも デビュー時17・8歳〜解散時21・2歳という 少女から大人へ移り変わる 彼女たちの実年齢に合わせるかのように 曲調・内容が少しづつ成長しているのです 当時のことですから むろんブランディングなどという言葉はありません しかしブランドのストーリー作りという意識は持っていたでしょう[15] … Continue reading

註釈

註釈
01 キャンディーズというブランドが成立したのは メンバーである3人の努力だけではありません 事務所の社長・副社長・音楽プロデューサーをはじめ 周りのスタッフの力があったからこそです その上バックバンドであるMMPはもちろん 作詞・作曲の人々も皆3人のファンとなり キャンディーズという事象が起きたのです 顧客とスタッフ そして当の3人たちまでもが キャンディーズの大ファンでした
02 〇〇48であるとか〇〇坂と並べる論調がありますが コーラスのトリオはそれぞれ役割を持ちます 群舞が特徴のグループとは全く別のものです マーケティングの参考にしたのは事実でしょうが 比較する対象ではありません
ただ単に歌の上手いアイドルでは括れない ビジュアルに恵まれたコーラスグループというだけでない やはりキャンディーズとしか言いようがない 本物のエンターティナーです キャンディーズに比肩しうるグループはないでしょう
03 ザ・ピーナッツは声量があります また声質が同じなので ハーモニーに厚みが感じられます キャンディーズのハーモニーは 甘やかな透明感が特徴でしょうか 存在感を示すよりも情感の奥行きがあります
ザ・ピーナッツは けっこうアヴァンギャルドなイメージで売っていたと思います キャンディーズの3人はどちらかというと慎ましい感じです
「ふりむかないで」「恋のバカンス」を聴くと表現の違いが明瞭です デュオとコーラスグループの楽曲の組み立て方か
04 YouTubeに上がっているのは レコードが音源のものも多いですが 40年前の録音なので マルチトラックで音量は調整しても 3人揃っての一発録りだと思います レッスンの様子を録音した音源でも 本当に熱心に歌・コーラスワークと取り組んでいます 映像を見ていて気づいたのですが どんな振りでも体軸がぶれていない 発声の基礎がしっかりしているからです
ライブの音源を時系列で聞くと 初期の頃も下手ではないのですが わずか4年の間の成長ぶりは目を見張るものがあります これにはMMPとの出会いが大きかったと思われます MMPの参加で圧倒的なドライブ感(というのかな)が加わった感じを受けます MMPはキャンディーズの音楽性をサポートするにとどまらず キャンディーズのファンであったでしょう まさにコラボレーションです
05 昭和の歌手は TVの歌番組でも生演奏で歌っていました(下手はいつの時代にもいて いわゆる口パクもありましたが) キャンディーズの場合アイドルグループということで 振り付きです なのにライブで歌ってレコード音源と差がない しかも生演奏・生歌に加えて 振りではマイクのコードさばきが必要な時代です 大した実力です 「恋のあやつり人形」の人形振りなど かなり体力を使うのに 安定した歌いぶりを見せます 音合わせの時でも必ず振りをつけていたそうです エンターテインメントとして楽曲と一体なのです
06 3人は他人同士ですから 容貌も違えば個性もそれぞれです しかしどこか共通した雰囲気を持っています だからこよなく気が合ったのでしょうが 3人の仲のよさは生涯続くことになります 偶然とは思えない出会いです
3人の歌声を例えるなら 天(ラン)地(ミキ)人(スー)ではないでしょうか 愛嬌と親しみの田中好子 どこか浮揚感のある伊藤蘭 コーラスを支える藤村美樹 というところです 人柄では ミキは天然だがしっかりしている ランは文学少女ながら気配りできる スーはムードメーカーの甘えん坊 3人に共通するのは 素直で真っ直ぐ一途なところです そして何よりも仲の良さ これが楽曲に表れています
07 キャンディーズはバラエティ番組にも躊躇なく 難しい歌をさらりと歌いこなし どんな衣装も着こなしてみせますね 比較的おとなしい衣装が多かったが 大胆なものもありました(網タイツ姿でも なぜか気品と清純さを失わない) 本格的なコーラスグループとして歌を届けるのと何ら変わらない オーディエンスを愉しませるプロ意識のなせることです
08 40年も前の話です TVが元気な頃でした キャンディーズもレギュラーだった『8時だョ!全員集合』は 視聴率が常時30%を超えていたと思います(占拠率の数字は覚えていませんが あの頃は全家庭がTVをつけてましたね) ザ・ドリフターズのコントは 緻密な計算のもとに成り立っていました
ザ・ドリフターズはバンド(冗談音楽)として始まりました 言葉よりも動きの笑いです コーラスグループであるキャンディーズが コントに取り組むこと間のとり方がうまいのも エンターテイナーとして共通点があるのかも知れません
09 ある歌番組で伊藤蘭が病欠したことがあります 残りの藤村美樹と田中好子は出演したものの 新曲を歌うことはありませんでした(ア・カペラで歌い出し部分だけ紹介しましたが) その新曲「春一番」は3人揃ってのフルコーラスでした ほとんどユニゾンの曲です コーラスグループとしての矜持を保ったのだと思います おそらく彼女たちの意志だったでしょう(仲のよさの表れでもあります)
10 3人は天与の才能というより 努力の人たちであったと思います キャンディーズである間は「普通の女の子」の生活を求めない という決意で限界まで突き進んだのは想像に難くない 「ここまで全力で走ってきましたから(解散するのは)まったく悔いがありません」と言い切ってましたね 目標に向かって努力するのも才能の一つです
11 最初はNHKの番組「歌謡グランドショー」のマスコットガールとして採用された3人です キャンディーズというグループ名もこのときに付けられました オーディションというのは番組出演時のことでしょう
ハリウッド映画はプロデューサー・システムなので 出演者もスタッフもオーディションを受けなければなりません オファーの仕事なんてごく一握りの人です NHKも番組制作はプロデューサーが全権を持っていて オーディションがあります(いちど合格すれば他の番組にも出られますが)
ナベプロとしては最初から この3人をグループで売るつもりだったと思います スクールメイツ時代から大変仲がよく いつも3人一緒だったようで ♪なぜか気が合うて別れられぬ まさに同期の櫻でした
12 以前ボーカルが加わったジャムセッションを聞いたとき ジャズボーカルは楽器の一つなんだなと感じました その線上にスキャットがあるのではないでしょうか
コーラスグループも同じ気がします バックバンドとの呼吸が重要ですし 一方で実力のある歌い手ならア・カペラも成立します 歌も他の楽器と同等のパートなのです
13 3人が東京音楽学院に入学したのは1969年から1970年 キャンディーズとしてデビューしたのが1972年 レコードデビュー1973年ですから 2〜3年間音楽の勉強をしてきたわけです デビューしてから3年間は全力で頑張ると決めたのも そのへんから来ているのでしょうか
中学生から6・7年間 青春のすべてを音楽に捧げてきたのです 「普通の女の子(の生活)に戻りたい」は 彼女たちの切実な気持ちが吐露された言葉です 今と違う生活に憧れる若い時期はあります 普通の感覚を持って自分の人生と真剣に向き合っていたということです
14 「ロマンチストな私ラン ちょっとボーイッシュなミキ ちょっぴりセンチなスー」という惹句が示す それぞれのキャラクターに ファンは自分の思いを仮託します 際立つ個性がない3人は イメージが抽象化した面があります 当時のファンも節度を保ち ナイトを任じていたかのようです ほどよい距離感を持ち 身近なようでいて 現実にはない世界観を形作ることになります
15 はじめの頃のコンサートでは ミュージカル仕立てのキャンディーズ物語といった寸劇をやっていました 内容はキャンプ場で知り合った3人が 歌手になるためオーディションを受けるが 一人が間に合わなかったみたいな アイドルにありがちなものです(実際に藤村美樹は1年遅れで東京音楽学院に入学しています) これが本格的な歌唱力を身につけるに連れ コーラスグループとしてのストーリーとなっていった
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洗練と泥臭さ(広告の変遷)

SPはもちろんのこと マーケティングの括りでは広告も本来泥臭いものです クールデザインや気の利いたコピーが目的になってはいけない
ケースにもよりますが プロの手になる洗練されたデザインよりも いかにも素人が頑張っている広告物が効果的なことはよくあります あえてヘタウマを狙うのとは違います

デザイン面で破綻しているのが かえって躍動感を生み出したりします ありきたりなコピーは決まり文句です 決まり文句は一定の効果があります 効果があるから皆が使う だからどこかで見たようなものになるのです

このごろの広告(TVCM)は健康食品と化粧品の通販ばかりになってしまいました 絶叫型のCMは本当に不愉快ですが 上品ぶっても売れません とにかく印象に残らなければいけない
こういった商品は理屈では売れません 耳目を引きつけ煽って売るものです(マネキンの実演販売と同じ) 考えさせてはいけない いまから30分以内と期限を切ります(クリンチャー)

私が現役でやってた頃は サントリーや資生堂といった鑑賞に値する 作品といっていい広告が制作されていました 実際に市川崑監督を起用したり サンアドからは数々の文筆家が出ています
これらの広告をイメージ戦略とかいってましたが[01] … Continue reading 今でいうブランディングのためですね もっとも広告費は非常に高額でしたから すでにブランドが確立された企業しかやれなかったものです

サントリーオールドのTVCMに登場する役者さんは その人生の重みを感じさせる風貌の持ち主ばかりでした
今は味のある役者さんが少ない気がします 特にある程度以上の年齢で 重厚な役ができる役者さん 年寄り役ができる役者さんがいない[02] … Continue reading 年をとってる人はいくらでもいますが みな存在感が軽すぎるのです[03] … Continue reading

このごろの風潮として 年齢相応の風格・落ち着き[04] … Continue readingを尊重しません 妙に若ぶっているのが持て囃されます 先に挙げた健康食品や化粧品はすべて そのような層をターゲットとしています 時流を捉えているわけですね
料理食材の鮮度や作り立てばかりが強調されて 熟成された深みのある味が失われていくのと 同様の傾向なのでしょう 若い時に大人ぶったりしたことはありますが いまはいい大人が若さに媚びています

註釈

註釈
01 安易な方法としては有名人を使って むりやりブランドイメージに結びつけるのもありました ネスカフェ・ゴールドブレンドが代表です(ダバダァー違いがわかる男のTVCM) この人達が本当にインスタントコーヒーを飲んでるのか?と思ってましたが 團伊玖磨がギャラに惹かれて出演したとか書いていたようです(團伊玖磨編はWikipediaに掲載されてません 確かに数回しか見たことがないし 互いにとって消してしまいたい過去だったのかな) インスタントコーヒーを権威付けしてどうなるんだと思いますが
02 東京物語で初老のお父さん役を演じた笠智衆は 当時二十代だったのですから演技を超越した役者さんです 特殊メイクでもあれは無理でしょうね とくに立ち姿や何気ない動作に年齢が表れるものです
03 アル・パチーノやロバート・デ・ニーロは 本当に上手に年をとっていると思います 役作りだけでない 洗練された大人の魅力を醸し出しています 夢を見続ける永遠の少年の心なんて褒め言葉じゃない 大人になることを理解できないピーターパン症候群です
04 吉永小百合さんは 歳を重ねるに従い あく抜けて綺麗になっています デビュー当時は向こうっ気が強く何にでも前向き チャーミングであるが美形とはいえなかった(ハッキリ言って大根役者さんです でもあの存在感は何者にも代え難いものがある)
「男はつらいよ 柴又慕情」で 吉永小百合と倍賞千恵子が共演の形になりました お二人とも人間性と風貌(実年齢とキャラクター)が見事に一致している 女優とはこうあるものだと思います 女優だから いくらでも化けられる面はありますが それも年輪です 外見だけではない大人の女性です
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通信販売

通信販売はアメリカで始まったといいます 最初はメールオーダーでした
西部開拓時代 人々が定着して各地に町ができます しかし生活物資の供給は追いつきません 流通は駅馬車で後に鉄道が引かれますが 町にあるのは小さな万屋1軒だけです
日用品をまかなえても 大型の農機具等はストックされていない そこで商店や駅にカタログを置き 注文書を郵送します(郵便物も駅馬車や列車で運び 駅で受け渡ししたのです) 注文した商品は小包で郵送されます

メールオーダーであり カタログ販売が通信販売の始まりだったのです やがて新聞・雑誌が普及すると広告で商品を売ることが行われます ただこの商品は顧客リストを作るのが目的です
その商品を売って利益を得るよりも 商品に満足した客にその他の商品カタログを届けるのです ですから広告料金等は販売促進の費用と考えます 商品カタログは出張店舗です(オーバー・ザ・カウンター)

他の業態でも同じなのですが 固定客・リピーターがもっとも大事な顧客です つまり会社のファンになっていただくのです 広告で売る商品はそのきっかけです ネームゲティングといいます
日本でも通販の広告は自社リストのためでした ところがTV広告で通販を始めると様相が変わってきます

TV通販

ある通販会社の新聞広告をやっていたことがあります この会社が試しにTV広告を打ったところ これが大変な反響でたちまち完売したそうです(ジャパネットたかた[01] … Continue readingより ずいぶん前の話です)
それに味を占めた会社はTV広告に軸足を移し 新聞広告の仕事はなくなってしまいました 一見客ばかりを相手にするようになった通販会社は その後あまり長く続かなかったようです

とはいえ今でも健康食品や化粧品等のTV通販は盛んです 衛星放送が始まり総体的な放送時間が増えたため 広告料金のダンピングで利用しやすくなったからです いまや雨後の竹の子のごとき状態を呈しています(なぜか圧倒的に九州が多い)
初回無料で売り上げを伸ばしたのは やはり九州の「ドモホルンリンクル」あたりでしたか 1回サンプルを取り寄せたら しつこく勧誘電話がかかります リピート客というより定期購入の継続販売を狙っています[02]格安のお試し価格でサンプルを取り寄せたつもりが いつの間にか定期購入に移行していた なんて事も悪質なところでは行われています

モラルリスク

反面で通信販売には「モラルリスク」というものがあります 料金後払いや代引払いの場合 商品が到着しても支払わなかったり 気が変わったといって返品したりする客が一定数いるのです
後払いの大半は後でと思いつつ うっかり忘れてしまう善意の遅れです この人たちは穏やかな督促で支払います 中には常習的に支払いが遅れる客もいます またクレームを付けて返品する客の中にも常習者がいます

1回の督促で支払う客は問題ありません しかし督促しても支払わない悪質な客に対しては 回収の費用と代金が引き合わないケースがあります 少額商品で遠隔地の客などです これをモラルリスクといい 商品の価格に最初から損金で上乗せします

以前主婦グループの通販詐欺がありました 低単価で売りさばけるものを大量に購入します 一人で何回もの取引は怪しまれるでグループを作ります 要するに取り込み詐欺ですが 小遣い稼ぎ感覚の軽い気持ちでしょう

高額な本格的詐欺と違い金額も少ないし 犯人と被害者に面識がないため 摘発が難しいのです だいたいコソ泥がいちばん質が悪い
万引きなども犯罪意識が希薄なので累犯が多くなります たとえ捕まっても微罪ですから懲りないのです[03] … Continue reading

インターネット通販

日本の通販はまるで狐と狸の化かし合いとなってしまいました 絶叫型とネガティブアプローチが席巻するTVCMは健全な姿とはいえない 通販の原点に立ち戻り 固定客を大事にしなければなりません
そのためにもっとも大切なのが 購買リストとクレームリストです これをもっとも効率的に運用しているのはアマゾンです レコメンドエンジンとユーザーレビューですね

自社リスト(ハウスリスト)が通販の資産です 一時的に売れるからといって楽天に出店しては 客の動向を把握することができない まして価格競合に陥るとバーゲンハンターばかりが集まり 将来の優良客に結びつくことは決してありません
通販先進国のアメリカで Eモールタイプのインターネットショッピングは全く下火になっています 日本も楽天の成功に倣ったモールがたくさんできましたが ことごとく姿を消してしまいました

註釈

註釈
01 ジャパネットたかたは小さなTV通販の会社でした そのためもっぱら深夜の安い時間帯を使っていました インフォマーシャルの手法と高田社長のキャラクターが相まって 飛躍的に売り上げを伸ばしたのです
02 格安のお試し価格でサンプルを取り寄せたつもりが いつの間にか定期購入に移行していた なんて事も悪質なところでは行われています
03 書店やスーパーマーケットの万引きが取りざたされますが なにも社会の歪みのせいではありません 大半が常習犯です 書店で万引きする少年が年老いて 老人の万引き常習者になることが多い 盗癖というのは確かにあります 癖ですから矯正できない
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