コーラスグループのブランディング

キャンディーズという事象

キャンディーズというコーラスグループがありました デビューから4年半の活動で自ら解散した 清純な歌声の3人組でした 日本に勢いがあった昭和のノスタルジーとともに記憶に残ります
ブランディングとはファンを作ることです 顧客があって初めてブランドが成り立ちます 解散に向けてファン(顧客)が全面的に応援したところに キャンディーズというブランドの価値があります1)キャンディーズというブランドが成立したのは メンバーである3人の努力だけではありません 事務所の社長・副社長・音楽プロデューサーをはじめ 周りのスタッフの力があったからこそです その上バックバンドであるMMPはもちろん 作詞・作曲の人々も皆3人のファンとなり キャンディーズという事象が起きたのです 顧客とスタッフ そして当の3人たちまでもが キャンディーズを愛していました

キャンディーズの頃

先日のこと YouTubeで他の曲を聴いていたのですが キャンディーズが その曲をカバーしているバージョンがあります 何気なく聴いてみたところ これが驚くほど上手いのです
ほかを探してみたら ザ・ピーナッツの曲を歌ったものが素晴らしい出来です ザ・ピーナッツの歌唱力には定評があります それに伍しているばかりでなく2)ザ・ピーナッツは声量があります また声質が同じなので ハーモニーに厚みが感じられます キャンディーズのハーモニーは 清新で甘やかな透明感が特徴でしょうか 存在感を示すよりも情感の奥行きがあります
ザ・ピーナッツは けっこうアヴァンギャルドなイメージで売っていたと思います キャンディーズの3人はどちらかというと慎ましい感じです
 三人三様の個性を生かしたハーモニーは見事でした 何よりも丁寧に歌っているところに好感を持てます
ライブの録音を聴いてみました 息切れ一つせず 3人のコーラスに乱れはありません バックバンドMMPとの掛け合いも絶妙です 相当のレッスンを積んでいるのでしょう3)YouTubeに上がっているのは レコードが音源のものも多いですが 40年前の録音なので マルチトラックで音量は調整しても 3人揃っての一発録りだと思います レッスンの様子を録音した音源でも 本当に熱心に歌・コーラスワークと取り組んでいます
ライブの音源を時系列で聞くと 初期の頃も下手ではないのですが わずか4年の間の成長ぶりは目を見張るものがあります これにはMMPとの出会いが大きかったと思われます MMPの参加で圧倒的なドライブ感(というのかな)が加わった感じを受けます MMPはキャンディーズの音楽性をサポートするにとどまらず キャンディーズのファンであったでしょう
 さらに感心したのが 観客に語りかける際のきちんとした言葉使いです 良識を持った人たちですね

現役時代のTV4)昭和の歌手は TVの歌番組でも生演奏で歌っていました(下手はいつの時代にもいて いわゆる口パクもありましたが) キャンディーズの場合アイドルグループということで 振り付きです それでもハーモニーが乱れることがありません 大したものです 明らかにアイドルの要素も持つコーラスグループですも見ていましたが こうやって改めて視聴してみると 3人が3人とも 気立てが良い素直でピュアな印象の方々です 癖のない歌声も飾らない笑顔も そしてたぶん心根も無垢で真っ直ぐに違いない5)3人は他人同士ですから 容貌も違えば個性もそれぞれです しかしどこか共通した雰囲気(人柄)を持っています だからこよなく気が合ったのでしょうが 3人の仲のよさは生涯続くことになります 偶然とは思えない出会いです
コーラスグループのメンバーは 従業員であり自らが商品でもあるという特異な存在です(キャンディーズはレコーディングの際 曲作りにも参加していました 曲冒頭のスキャットは大体3人で考えたらしい 譜面を渡されて歌うだけでないのです) (顧客)を大事にする心構え 商品力を磨きあげる真面目さが伺えます まさにプロフェッショナル精神に徹したエンターテイナーです6)キャンディーズはバラエティ番組にも躊躇なく 難しい歌をさらりと歌いこなし どんな衣装も着こなしてみせますね 比較的おとなしい衣装が多かったが 大胆なものもありました(網タイツ姿でも なぜか清純さは失わない) 本格的なコーラスグループとして歌を届けるのと何ら変わらない オーディエンスを愉しませるプロ意識のなせることです

当初は渡辺プロダクションの商品であったでしょう キャンディーズというネーミングが示すように マスコット的なキャラでした よく通る高音の田中好子をリードボーカルに据えた アイドルグループとしての仕事に 溌溂と取り組んでいました7)40年も前の話です TVが元気な頃でした キャンディーズもレギュラーだった『8時だョ!全員集合』は 視聴率が常時30%を超えていたと思います(占拠率の数字は覚えていませんが 50%超だったのではないか) ザ・ドリフターズのコントは 緻密な計算のもとに成り立っていました
ザ・ドリフターズはバンド(冗談音楽)として始まりました コーラスグループであるキャンディーズが コントに取り組むこと間のとり方がうまいのも エンターテイナーとして共通点があるのかも知れません

それだけでなく 自分たちでキャンディーズというコーラスグループを作り上げる 自覚と自信と自負を持っていたと思います8)ある歌番組で伊藤蘭が病欠したことがあります 残りの藤村美樹と田中好子は出演したものの 新曲を歌うことはありませんでした(ア・カペラで歌い出し部分だけ紹介しましたが) 3人揃ってのハーモニーがキャンディーズです コーラスグループとしての矜持を保ったのだと思います おそらく彼女たちの意志だったでしょう(仲のよさの表れでもあります) 音楽面では声域の広い藤村美樹が中心となり ハーモニーを支える役割でした 
研鑽を重ねることで グループのカラーが次第に変化するのを見抜き 伸びやかな歌唱の伊藤蘭をセンターにした判断は プロデューサーの手腕に負うところが大きいですね お姉さんキャラで打ち出した曲が大ヒットしました

3人とも才能はあったにしろ 美空ひばりや藤圭子のような天才歌手ではありません チームワークと不断の努力9)3人は天与の才能というより 努力の人たちであったと思います キャンディーズである間は「普通の女の子」の生活を求めない という決意で限界まで突き進んだのは想像に難くない 「ここまで全力で走ってきましたから(解散するのは)まったく悔いがありません」と言い切ってましたね 一途で誠実な人生ですで成し遂げた実力ミュージシャンでした キャンディーズを評価するとき欠かせない観点は スクールメイツ出身であることです
東京音楽学院在籍者から選抜されたのがスクールメイツです キャンディーズはさらに その中からオーディションを経て結成されました 3人は正当な音楽教育を受けた確かな歌い手なのです10)最初はNHKの番組「歌謡グランドショー」のマスコットガールとして採用された3人です コーラスグループどころかレコードデビューの予定さえなかった このオーディションというのは番組出演時のことでしょう ハリウッド映画はプロデューサー・システムなので 出演者もスタッフもオーディションを受けなければなりません オファーの仕事なんてごく一握りの人です NHKも同様にオーディションがあります 

ブランディングでもっとも大切なのは 従業員の意識の持ち方と顧客を大切にする姿勢です(コーラスグループでなくても 従業員は最大・最良なメディアです) 社是・社訓ではない マニュアルでもない 数字に表れないエモーショナルなうねりです11)以前ボーカルが加わったジャムセッションを聞いたとき ジャズボーカルは楽器の一つなんだなと感じました その線上にスキャットがあるのではないでしょうか
コーラスグループも同じ気がします バックバンドとの呼吸が重要ですし 一方で実力のある歌い手ならア・カペラも成立します
 従業員の意識の高さが 立ち居振る舞い・表情にも如実に出ます そして顧客に伝わるのです
近ごろは ブランディングを標榜するコンサルタント会社がみられます 以前はやったCIと同じく ブランディングには経営層の承認が必要です コンサルティング会社にとっての客は社長なのです
社長の判子がもらえれば商売は成り立ちます そこから先の従業員やエンドユーザーを考慮する必要はありません 現場を顧みないプランニングは 経営層の受け狙いの御為倒しとなります

キャンディーズは 自分たちの商品特性とライフサイクルを正確に理解していました 一度できたブランドにいつまでも縋らない 最高の状態で解散することを最初から考えていたそうです 自分たちで築き上げたキャンディーズであるからこその決断です12)3人が東京音楽学院に入学したのは1969年から1970年 キャンディーズとしてデビューしたのが1972年 レコードデビュー1973年ですから 2〜3年間音楽の勉強をしてきたわけです デビューしてから3年間は全力で頑張ると決めたのも そのへんから来ているのでしょうか
中学生から6・7年間 青春のすべてを音楽に捧げてきたのです 「普通の女の子(の生活)に戻りたい」は 彼女たちの切実な気持ちが吐露された言葉です 今と違う生活に憧れる若い時期はあります 芸能界引退という意味ではなかったでしょう 自分の人生と真剣に向き合っていたということです

ブランディングとは お客様に商品のファンになっていただくことです キャンディーズには 全キャン連というファンの全国組織まで 自然発生的に生まれました ファイナルカーニバルに向けてのキャンペーンでは 3人の意志をファンが支えて デビュー以来最大の盛り上がりを見せました

解散の宣言をまず観客に告げたのは しっかりと顧客に向き合っていたことを現します その真摯な姿勢にファンが呼応し共鳴し うねりを生じたのです
こうやって今に語り継がれる キャンディーズ1676日の伝説が生まれました (ファン)とともに物語を紡ぎ出すことが すなわちブランディングです
キャンディーズの自立精神は 所属プロダクションを動かし 顧客は自ら参加し エバンジェリストとなりました 図らずもブランディングの成功事例となったのです

キャンディーズの意識の高さに加え 音楽プロデューサーの力量にも素晴らしいものがありました いま楽曲を振り返ってみると すべて夢見る年頃の おとぎ話のような恋を歌っています 洗練された曇りのないハーモニーが清々しい
3人のイメージを生かした あたかも等身大の日常を思わせます しかも デビュー時17・8歳〜解散時21・2歳という 少女から大人へ移り変わる 彼女たちの実年齢に合わせるかのように 曲調・内容が少しづつ成長しているのです
当時のことですから むろんブランディングなどという言葉はありません しかしブランドのストーリー作りという意識は持っていたでしょう13)はじめの頃のコンサートでは ミュージカル仕立てのキャンディーズ物語といった寸劇をやっていました 内容はキャンプ場で知り合った3人が 歌手になるためオーディションを受けるが 一人が間に合わなかったみたいな アイドルにありがちなものです(実際に藤村美樹は1年遅れで東京音楽学院に入学しています) これが本格的な歌唱力を身につけるに連れ コーラスグループとしてのストーリーとなっていった

キャンディーズの後

キャンディーズは1970年代に活躍したグループです ヒットチャートやマス媒体での人気が指標です いま考えてみれば 高度成長期が陰りを見せ始めた時期です
日本の方向性が見失われつつあったのですが ナショナルプロダクツをマスマーケットで売ることに疑問を持たない 拡大と売上至上主義 広く薄く商品を売りさばく 数字を持ってこいの数の論理が まだ罷り通っていました

そんな中でキャンディーズは 一部の熱狂的なファンに支えられた独自の存在でした 意識してコアな層を狙ったわけではありません 彼女らのひたむきな姿が共感を呼び起こしたのです14)この3人でなければキャンディーズはなかった 声質のバランスがちょうどいいし 3人の仲は非常によく協調性がある 息の合いかたは姉妹以上です
TV番組の映像で泊まっている旅館の一室に 布団3枚をピッタリ付けて敷いているのを見て 微笑ましく思いました ホテルに泊まるときも ツインルームにエキストラベッドを入れて 3人一部屋だったみたいですね
お互いが相手の良さを引き立てるのが 調和そのものです これが音楽面での 美しいハーモニーに寄与していたのは確かなことです 3人の純粋無垢な人間性ですね

新時代を先取りしたブランディングの草分けと言えましょう 普通の女の子の生活を捨て 青春のすべてをキャンディーズにかける健気さ 真面目に一所懸命に取り組めば必ず伝わります

キャンディーズの解散は 一見唐突に思えます それでも彼女たちの中では予定の行動だったのです デビューから3年間を目安に(実際は4年間の活動です) 終わり方を3人で話し合っていた
年若い彼女たちが何故 そのように考えたのかは分かりません ファイナルカーニバルでの言葉「キャンディーズが始まったときの 純真な気持ちのままで キャンディーズを終わりたかった」に集約されている気がします15)3人は各々の希望を持って音楽の勉強を始めたはずです キャンディーズが結成されたとき 3年間はこの3人でコーラスグループとしてやっていこうと 決意したのではないですか 期限を区切った目標があったからこその切磋琢磨 単なる仲良しグループではあそこまでできなかったでしょう
YouTubeの映像(寄せられているファンの方々のコメントは よく見ているし本質を的確に捉えている 衆知は評論家などよりよほど参考になります)を見ると 初期の頃から「私たちはコーラスグループ」と言い続けています 解散の理由もそれぞれの道を歩むためと明確です 自分たちの信念に従った行動なのです ブレることなく一貫しています

渡辺プロダクションは慰留しました しかし自分たちで決めたことだからと 一途に意志を貫き通したのです 最終的には会社が妥協する形で 半年後のファイナルカーニバルをもって 解散という形になりました

それまでにも 一身上の都合で引退する芸能人はいました 同じ事務所の先輩であるザ・ピーナッツは「さよならピーナッツ」という特集番組を最後に いわば円満退職しています ファイナルカーニバルはそれに倣ったものでしょう

ああいう形で解散したからには いかなることがあってもキャンディーズの復活はありえない 全力を出し尽くした やれるところまでやったから 解散したわけです
たとえ田中好子さんが存命でも 藤村美樹さんが芸能界に関わっていても 再び3人が歌うことはないのです あの当時の煌きは若さだけではない 本当に充実していたことが今でも伝わります16)伊藤蘭さんが歌手に復帰するのはどうでしょうか(非常に歌のうまい方でした ファイナルカーニバル時 ウェディングドレス風な衣装で きれいなファルセットを披露していました) まぁTV局やレコード会社・プロダクションの意向だったのでしょう
40年のブランクと年齢に抗うことはできません 声の張りも伸びも かつてのようにはいかない それとキャンディーズの曲だけは封印してほしかったかな 3人揃ってキャンディーズですから
ファイナルカーニバルの何週間か前 ラジオ番組で田中好子さんが「燃え尽きて きれいな灰になりたい」と言ってました(その通りになってしまいました) キャンディーズは あのとき燃え尽きたのです
あれから40年あまり過ぎました キャンディーズ時代は当人にとって長い人生のうちの1ページです そこまでの思い入れはないかも知れない(受け答えを見ていると キャラクターは全く変わってませんしね) 歌手復帰の理由が子育てが一段落したからと いたって普通の感覚です 家庭と家族を何よりも大事にする健全な生き方ではあります

昭和から平成そして令和と時は移り変わり 芸能界とTVも様変わりしました NGTや吉本興業の騒動を見れば 明らかに劣化しています
プロダクションも所属芸能人も 顧客そっちのけで醜い内輪もめを繰り広げています 〇〇〇48はメンバー間の競争をプロモーションに利用していましたし17)個人的な好みに過ぎませんが 群舞が嫌いです みんな揃って整然というのが北朝鮮やSGIのマスゲームを連想させるのです TVCMも意味のない群舞が見られる とりあえず目立てばいいという発想ですね
よさこいソーランや阿波踊りを見ていると 悪達者という言葉が思い起こされます 民謡流しはあんなものじゃなかった 見得を切ったりしません 連やグループの中で序列が形成され 内部統制が図られているのだろうなと想像します
 楽屋落ちは吉本の芸風ではあります こうなるのは必然だったのかも知れません

キャンディーズができたのは 渡辺プロダクションの力によるものが大きい そして解散を認めた会社の度量も称賛すべきです18)渡辺プロダクションや東京音楽学院の内情は知りません ジャズから始まっているのですから自由な気風があったと思います 所属タレントを束縛することがなかったのではないか
キャンディーズのシングルは最終的に渡辺晋・美佐子が認めたものです レコーディング後に作り直しもいくつかありました 主にキャンディーズのイメージを維持するための注文です
渡辺プロダクションが ワタナベエンターテインメントと組織変更するとともに 東京音楽学院も事実上活動を停止したようです ひとつの時代が終わったということか

渡辺晋はジャズマンの地位向上のため プロダクションを設立しました 渡辺美佐は東京音楽学院を作り 日本のジャズ・ポップスのレベルアップを目指しました
東京音楽学院の選抜チームであるスクールメイツから キャンディーズは生まれました 渡辺晋・美沙子夫妻の志を継承していたのは 自然の成り行きだったといえるでしょう19)キャンディーズは洋楽のカバーにも積極的でした バラード調の歌い上げる曲は声質に合っていてさすがに上手い 英語の発音やロックのノリはオリジナルと違いますが 別に歌真似をしているわけじゃなくて 自分たちの解釈で歌っています なにしろ藤村美樹は3・4歳のころから イタリア語で(多分オペラを)歌っていたほどの素養があります

1978年キャンディーズ解散の頃は すでに渡辺晋が病に倒れていました いま渡辺プロダクションは衰微しています そして芸能界とTV番組制作も かつての勢いはありません ついに日本のエンターテインメントは根付かなかったのです20)高い歌唱力に可憐な容姿があり 伊東四朗・小松政夫といった芸達者な面々と絡んで ドタバタコメディーまでこなす 多芸多才というよりサービス過剰なエンターテイナーです
何事にも体当たりで取り組む むしろ不器用な生き方です こんな3人が出会いグループを組んだのは どのような力が与ったのでしょう 時代によるものでしょうか 二度と現れない事象であるのは確かです

カラオケが広く一般に普及したのが1980年代です TVの歌番組が消えたのも同時期です 以来プロフェッショナルな芸能から 素人芸がもてはやされ浪費されるようになった気がします21)専門的なことは分からないのですが キャンディーズの歌は副旋律によるハーモニーとともに オブリガート(対旋律)が特徴なのだそうです しかも主旋律を歌う人が曲の途中で変わったりする そう言われて聴けば確かにその通りですね
○○と■■ ✕✕&▲▲といったグループ名は メインボーカルが固定していて 他のメンバーはバックコーラスです キャンディーズは3人が同列で 曲によって主旋律・副旋律・対旋律の役割を交代します 大変に高度な歌唱法ですから カラオケで真似はできないわけです

10月3日追記=キャンディーズの曲で最近「インスピレーション・ゲーム」が気に入ってるのですが 恐ろしいほどの洞察力の文章がありました ギャランティーク和恵さんの キャンディーズ「インスピレーション・ゲーム」で到達したコーラスグループとしての完成形 です

女性の持つ強さや潔さ、そして静かな狂気と情念の世界がキャンディーズと化学反応を起こして・・・

私ではとてもここまで読み取ることができない この人たちは男と女の情念を両方わかるのでしょうか キャンディーズは甘い声質から 大人の歌は難しいかと思っていましたが 彼女たちなりに歌いこなしています このことを化学反応と言ってるのかな
キャンディーズの楽曲はすべて 歌詞をとても大事に歌っています 歌詞をもらったとき まず三人で一拍の乱れもなくなるまで読み合わせし 歌詞の内容を完全に共有した上で コーラスワークに入ったそうです MCでの言葉遣いの丁寧さにも通ずる精神ですね)

10月11日追記=ファイナルカーニバルの映像を見ました ステージに立つ直前 伊藤蘭はしきりに武者震いしています(見かけによらず戦闘的な女だ) オープニング前奏が始まると田中好子は彼方を見る目となりました 藤村美樹は怖い怖いと言い続けます(恐怖を知る者が勇武を持ちます) 三人ともハルモニアの娘たちムーサから 戦いの処女神アルテミスに変身したと見えます 崇高な姿です)

Endnote   [ + ]

1. キャンディーズというブランドが成立したのは メンバーである3人の努力だけではありません 事務所の社長・副社長・音楽プロデューサーをはじめ 周りのスタッフの力があったからこそです その上バックバンドであるMMPはもちろん 作詞・作曲の人々も皆3人のファンとなり キャンディーズという事象が起きたのです 顧客とスタッフ そして当の3人たちまでもが キャンディーズを愛していました
2. ザ・ピーナッツは声量があります また声質が同じなので ハーモニーに厚みが感じられます キャンディーズのハーモニーは 清新で甘やかな透明感が特徴でしょうか 存在感を示すよりも情感の奥行きがあります
ザ・ピーナッツは けっこうアヴァンギャルドなイメージで売っていたと思います キャンディーズの3人はどちらかというと慎ましい感じです
3. YouTubeに上がっているのは レコードが音源のものも多いですが 40年前の録音なので マルチトラックで音量は調整しても 3人揃っての一発録りだと思います レッスンの様子を録音した音源でも 本当に熱心に歌・コーラスワークと取り組んでいます
ライブの音源を時系列で聞くと 初期の頃も下手ではないのですが わずか4年の間の成長ぶりは目を見張るものがあります これにはMMPとの出会いが大きかったと思われます MMPの参加で圧倒的なドライブ感(というのかな)が加わった感じを受けます MMPはキャンディーズの音楽性をサポートするにとどまらず キャンディーズのファンであったでしょう
4. 昭和の歌手は TVの歌番組でも生演奏で歌っていました(下手はいつの時代にもいて いわゆる口パクもありましたが) キャンディーズの場合アイドルグループということで 振り付きです それでもハーモニーが乱れることがありません 大したものです 明らかにアイドルの要素も持つコーラスグループです
5. 3人は他人同士ですから 容貌も違えば個性もそれぞれです しかしどこか共通した雰囲気(人柄)を持っています だからこよなく気が合ったのでしょうが 3人の仲のよさは生涯続くことになります 偶然とは思えない出会いです
6. キャンディーズはバラエティ番組にも躊躇なく 難しい歌をさらりと歌いこなし どんな衣装も着こなしてみせますね 比較的おとなしい衣装が多かったが 大胆なものもありました(網タイツ姿でも なぜか清純さは失わない) 本格的なコーラスグループとして歌を届けるのと何ら変わらない オーディエンスを愉しませるプロ意識のなせることです
7. 40年も前の話です TVが元気な頃でした キャンディーズもレギュラーだった『8時だョ!全員集合』は 視聴率が常時30%を超えていたと思います(占拠率の数字は覚えていませんが 50%超だったのではないか) ザ・ドリフターズのコントは 緻密な計算のもとに成り立っていました
ザ・ドリフターズはバンド(冗談音楽)として始まりました コーラスグループであるキャンディーズが コントに取り組むこと間のとり方がうまいのも エンターテイナーとして共通点があるのかも知れません
8. ある歌番組で伊藤蘭が病欠したことがあります 残りの藤村美樹と田中好子は出演したものの 新曲を歌うことはありませんでした(ア・カペラで歌い出し部分だけ紹介しましたが) 3人揃ってのハーモニーがキャンディーズです コーラスグループとしての矜持を保ったのだと思います おそらく彼女たちの意志だったでしょう(仲のよさの表れでもあります)
9. 3人は天与の才能というより 努力の人たちであったと思います キャンディーズである間は「普通の女の子」の生活を求めない という決意で限界まで突き進んだのは想像に難くない 「ここまで全力で走ってきましたから(解散するのは)まったく悔いがありません」と言い切ってましたね 一途で誠実な人生です
10. 最初はNHKの番組「歌謡グランドショー」のマスコットガールとして採用された3人です コーラスグループどころかレコードデビューの予定さえなかった このオーディションというのは番組出演時のことでしょう ハリウッド映画はプロデューサー・システムなので 出演者もスタッフもオーディションを受けなければなりません オファーの仕事なんてごく一握りの人です NHKも同様にオーディションがあります
11. 以前ボーカルが加わったジャムセッションを聞いたとき ジャズボーカルは楽器の一つなんだなと感じました その線上にスキャットがあるのではないでしょうか
コーラスグループも同じ気がします バックバンドとの呼吸が重要ですし 一方で実力のある歌い手ならア・カペラも成立します
12. 3人が東京音楽学院に入学したのは1969年から1970年 キャンディーズとしてデビューしたのが1972年 レコードデビュー1973年ですから 2〜3年間音楽の勉強をしてきたわけです デビューしてから3年間は全力で頑張ると決めたのも そのへんから来ているのでしょうか
中学生から6・7年間 青春のすべてを音楽に捧げてきたのです 「普通の女の子(の生活)に戻りたい」は 彼女たちの切実な気持ちが吐露された言葉です 今と違う生活に憧れる若い時期はあります 芸能界引退という意味ではなかったでしょう 自分の人生と真剣に向き合っていたということです
13. はじめの頃のコンサートでは ミュージカル仕立てのキャンディーズ物語といった寸劇をやっていました 内容はキャンプ場で知り合った3人が 歌手になるためオーディションを受けるが 一人が間に合わなかったみたいな アイドルにありがちなものです(実際に藤村美樹は1年遅れで東京音楽学院に入学しています) これが本格的な歌唱力を身につけるに連れ コーラスグループとしてのストーリーとなっていった
14. この3人でなければキャンディーズはなかった 声質のバランスがちょうどいいし 3人の仲は非常によく協調性がある 息の合いかたは姉妹以上です
TV番組の映像で泊まっている旅館の一室に 布団3枚をピッタリ付けて敷いているのを見て 微笑ましく思いました ホテルに泊まるときも ツインルームにエキストラベッドを入れて 3人一部屋だったみたいですね
お互いが相手の良さを引き立てるのが 調和そのものです これが音楽面での 美しいハーモニーに寄与していたのは確かなことです 3人の純粋無垢な人間性ですね
15. 3人は各々の希望を持って音楽の勉強を始めたはずです キャンディーズが結成されたとき 3年間はこの3人でコーラスグループとしてやっていこうと 決意したのではないですか 期限を区切った目標があったからこその切磋琢磨 単なる仲良しグループではあそこまでできなかったでしょう
YouTubeの映像(寄せられているファンの方々のコメントは よく見ているし本質を的確に捉えている 衆知は評論家などよりよほど参考になります)を見ると 初期の頃から「私たちはコーラスグループ」と言い続けています 解散の理由もそれぞれの道を歩むためと明確です 自分たちの信念に従った行動なのです ブレることなく一貫しています
16. 伊藤蘭さんが歌手に復帰するのはどうでしょうか(非常に歌のうまい方でした ファイナルカーニバル時 ウェディングドレス風な衣装で きれいなファルセットを披露していました) まぁTV局やレコード会社・プロダクションの意向だったのでしょう
40年のブランクと年齢に抗うことはできません 声の張りも伸びも かつてのようにはいかない それとキャンディーズの曲だけは封印してほしかったかな 3人揃ってキャンディーズですから
ファイナルカーニバルの何週間か前 ラジオ番組で田中好子さんが「燃え尽きて きれいな灰になりたい」と言ってました(その通りになってしまいました) キャンディーズは あのとき燃え尽きたのです
あれから40年あまり過ぎました キャンディーズ時代は当人にとって長い人生のうちの1ページです そこまでの思い入れはないかも知れない(受け答えを見ていると キャラクターは全く変わってませんしね) 歌手復帰の理由が子育てが一段落したからと いたって普通の感覚です 家庭と家族を何よりも大事にする健全な生き方ではあります
17. 個人的な好みに過ぎませんが 群舞が嫌いです みんな揃って整然というのが北朝鮮やSGIのマスゲームを連想させるのです TVCMも意味のない群舞が見られる とりあえず目立てばいいという発想ですね
よさこいソーランや阿波踊りを見ていると 悪達者という言葉が思い起こされます 民謡流しはあんなものじゃなかった 見得を切ったりしません 連やグループの中で序列が形成され 内部統制が図られているのだろうなと想像します
18. 渡辺プロダクションや東京音楽学院の内情は知りません ジャズから始まっているのですから自由な気風があったと思います 所属タレントを束縛することがなかったのではないか
キャンディーズのシングルは最終的に渡辺晋・美佐子が認めたものです レコーディング後に作り直しもいくつかありました 主にキャンディーズのイメージを維持するための注文です
渡辺プロダクションが ワタナベエンターテインメントと組織変更するとともに 東京音楽学院も事実上活動を停止したようです ひとつの時代が終わったということか
19. キャンディーズは洋楽のカバーにも積極的でした バラード調の歌い上げる曲は声質に合っていてさすがに上手い 英語の発音やロックのノリはオリジナルと違いますが 別に歌真似をしているわけじゃなくて 自分たちの解釈で歌っています なにしろ藤村美樹は3・4歳のころから イタリア語で(多分オペラを)歌っていたほどの素養があります
20. 高い歌唱力に可憐な容姿があり 伊東四朗・小松政夫といった芸達者な面々と絡んで ドタバタコメディーまでこなす 多芸多才というよりサービス過剰なエンターテイナーです
何事にも体当たりで取り組む むしろ不器用な生き方です こんな3人が出会いグループを組んだのは どのような力が与ったのでしょう 時代によるものでしょうか 二度と現れない事象であるのは確かです
21. 専門的なことは分からないのですが キャンディーズの歌は副旋律によるハーモニーとともに オブリガート(対旋律)が特徴なのだそうです しかも主旋律を歌う人が曲の途中で変わったりする そう言われて聴けば確かにその通りですね
○○と■■ ✕✕&▲▲といったグループ名は メインボーカルが固定していて 他のメンバーはバックコーラスです キャンディーズは3人が同列で 曲によって主旋律・副旋律・対旋律の役割を交代します 大変に高度な歌唱法ですから カラオケで真似はできないわけです