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“カバー曲シュガー・ベイビー・ラヴは 本家のルベッツより上手いと思います 藤村美樹の歌唱力に加え高音のコーラスが素晴らしい ルベッツのボーカルは一人なので比べてはいけないのですが 厚みが違うという感じ…”
キャンディーズという事象
キャンディーズというコーラスグループがありました 1972年デビューから4年半の活動で自ら解散した 清純な歌声の三人組でした 日本に勢いがあった昭和のノスタルジーとともに記憶に残ります
ブランディングとはファンを作ることです 顧客があって初めてブランドが成り立ちます 解散に向けてファン(顧客)が全面的に応援したところに キャンディーズというブランドの価値があります((キャンディーズというブランドが成立したのは メンバーである3人の努力だけではありません 事務所の社長・副社長・音楽プロデューサーをはじめ 周りのスタッフの力があったからこそです その上バックバンドであるMMPはもちろん 作詞・作曲の人々も皆3人のファンとなり キャンディーズという事象が起きたのです 顧客とスタッフ そして当の3人たちまでもが キャンディーズの大ファンでした))
キャンディーズは最初アイドルグループとしてデビューしたとはいえ 本格的なコーラスグループでした(むろんポップス・歌謡曲ですから 単純な女声3部合唱ではありません) そしてお笑いトリオ(?)の面も持つ多様性が特徴です 芸能界でも異彩を放つ独自の存在だったのです 昭和という時代が生んだエンターテイナーといえます
キャンディーズの前にキャンディーズなく キャンディーズの後にキャンディーズなし 唯一無二の存在であるから((〇〇48であるとか〇〇坂と並べる論調がありますが コーラスのトリオはそれぞれ役割を持ちます 群舞が特徴のグループとは全く別のものです マーケティングの参考にしたのは事実でしょうが 比較する対象ではありません
ただ単に歌の上手いアイドルでは括れない ビジュアルに恵まれたコーラスグループというだけでない やはりキャンディーズとしか言いようがない 本物のエンターティナーです キャンディーズに比肩しうるグループはないでしょう)) すなわちブランドなのです
キャンディーズの頃
先日のこと YouTubeで他の曲を聴いていたのですが キャンディーズが その曲をカバーしているバージョンがあります 何気なく聴いてみたところ これが驚くほど上手いのです
ほかを探してみたら ザ・ピーナッツの曲を歌ったものが素晴らしい出来です ザ・ピーナッツの歌唱力には定評があります それに伍しているばかりでなく((ザ・ピーナッツは声量があります また声質が同じなので ハーモニーに厚みが感じられます キャンディーズのハーモニーは 甘やかな透明感が特徴でしょうか 存在感を示すよりも情感の奥行きがあります
ザ・ピーナッツは けっこうアヴァンギャルドなイメージで売っていたと思います キャンディーズの3人はどちらかというと慎ましい感じです
「ふりむかないで」「恋のバカンス」を聴くと表現の違いが明瞭です デュオとコーラスグループの楽曲の組み立て方か)) 三人三様の個性を生かしたハーモニーは見事でした 何よりも丁寧に歌っているところに好感が持てます ちゃんと音楽を勉強した上手さです
ライブの録音を聴いてみました 息切れ一つせず 3人のコーラスに乱れはありません バックバンドMMPとの掛け合いも絶妙です 相当のレッスンを積んでいるのでしょう((YouTubeに上がっているのは レコードが音源のものも多いですが 40年前の録音なので マルチトラックで音量は調整しても 3人揃っての一発録りだと思います レッスンの様子を録音した音源でも 本当に熱心に歌・コーラスワークと取り組んでいます 映像を見ていて気づいたのですが どんな振りでも体軸がぶれていない 発声の基礎がしっかりしているからです
ライブの音源を時系列で聞くと 初期の頃も下手ではないのですが わずか4年の間の成長ぶりは目を見張るものがあります これにはMMPとの出会いが大きかったと思われます MMPの参加で圧倒的なドライブ感(というのかな)が加わった感じを受けます MMPはキャンディーズの音楽性をサポートするにとどまらず キャンディーズのファンであったでしょう まさにコラボレーションです)) さらに感心したのが 観客に語りかける際のきちんとした言葉使いです 1曲終わる毎に3人揃って 深々とお辞儀するのも自然な仕草ですし 良識を持った人たちですね
現役時代のTV((昭和の歌手は TVの歌番組でも生演奏で歌っていました(下手はいつの時代にもいて いわゆる口パクもありましたが) キャンディーズの場合アイドルグループということで 振り付きです なのにライブで歌ってレコード音源と差がない しかも生演奏・生歌に加えて 振りではマイクのコードさばきが必要な時代です 大した実力です 「恋のあやつり人形」の人形振りなど かなり体力を使うのに 安定した歌いぶりを見せます 音合わせの時でも必ず振りをつけていたそうです エンターテインメントとして楽曲と一体なのです))も見ていましたが こうやって改めて視聴してみると 3人が3人とも 気立てが良い素直でピュアな印象の方々です 癖のない歌声も飾らない笑顔も そしてたぶん心根も無垢で真っ直ぐに違いない((3人は他人同士ですから 容貌も違えば個性もそれぞれです しかしどこか共通した雰囲気を持っています だからこよなく気が合ったのでしょうが 3人の仲のよさは生涯続くことになります 偶然とは思えない出会いです
3人の歌声を例えるなら 天(ラン)地(ミキ)人(スー)ではないでしょうか 愛嬌と親しみの田中好子 どこか浮揚感のある伊藤蘭 コーラスを支える藤村美樹 というところです 人柄では ミキは天然だがしっかりしている ランは文学少女ながら気配りできる スーはムードメーカーの甘えん坊 3人に共通するのは 素直で真っ直ぐ一途なところです そして何よりも仲の良さ これが楽曲に表れています))
コーラスグループのメンバーは 従業員であり自らが商品でもあるという特異な存在です(キャンディーズはレコーディングの際 曲作りにも参加していました 曲冒頭のスキャットは大体3人で考えたらしい 譜面を渡されて歌うだけでないのです キャンディーズサウンドは藤村美樹が作ったと言っていいでしょう) オーディエンス(顧客)を大事にする心構え 商品力を磨きあげる真面目さが伺えます まさにプロフェッショナル精神に徹したエンターテイナーです((キャンディーズはバラエティ番組にも躊躇なく 難しい歌をさらりと歌いこなし どんな衣装も着こなしてみせますね 比較的おとなしい衣装が多かったが 大胆なものもありました(網タイツ姿でも なぜか気品と清純さを失わない) 本格的なコーラスグループとして歌を届けるのと何ら変わらない オーディエンスを愉しませるプロ意識のなせることです))
当初は渡辺プロダクションの商品であったでしょう キャンディーズというネーミングが示すように マスコット的なキャラでした 人受けのする田中好子をメインボーカルにした アイドルグループとしての仕事に 溌溂と取り組んでいました((40年も前の話です TVが元気な頃でした キャンディーズもレギュラーだった『8時だョ!全員集合』は 視聴率が常時30%を超えていたと思います(占拠率の数字は覚えていませんが あの頃は全家庭がTVをつけてましたね) ザ・ドリフターズのコントは 緻密な計算のもとに成り立っていました
ザ・ドリフターズはバンド(冗談音楽)として始まりました 言葉よりも動きの笑いです コーラスグループであるキャンディーズが コントに取り組むこと間のとり方がうまいのも エンターテイナーとして共通点があるのかも知れません))
それだけでなく 自分たちでキャンディーズというコーラスグループを作り上げる 自覚と自信と自負を持っていたと思います((ある歌番組で伊藤蘭が病欠したことがあります 残りの藤村美樹と田中好子は出演したものの 新曲を歌うことはありませんでした(ア・カペラで歌い出し部分だけ紹介しましたが) その新曲「春一番」は3人揃ってのフルコーラスでした ほとんどユニゾンの曲です コーラスグループとしての矜持を保ったのだと思います おそらく彼女たちの意志だったでしょう(仲のよさの表れでもあります))) 音楽面では声域の広い藤村美樹が中心となり ハーモニーを支える役割でした
研鑽を重ねることで グループのカラーが次第に変化するのを見抜き 気負わない歌唱の伊藤蘭をセンターにした判断は プロデューサーの手腕に負うところが大きいですね お姉さんキャラで打ち出した曲が大ヒットしました
3人とも才能はあったにしろ 一人ひとりは美空ひばりや藤圭子のような天才ではなく 際立った個性も持ちません しかしキャンディーズサウンドは唯一のものです 声質が違いながらユニゾンは 一つの声になっています 曲の中で主旋律を交代したり上と下が入れ替わる 多彩なコーラスワークも特徴です この三人でなければ成し遂げられなかった 呼吸(意気)が合っている結束の力によります チームワークと不断の努力((3人は天与の才能というより 努力の人たちであったと思います キャンディーズである間は「普通の女の子」の生活を求めない という決意で限界まで突き進んだのは想像に難くない 「ここまで全力で走ってきましたから(解散するのは)まったく悔いがありません」と言い切ってましたね 目標に向かって努力するのも才能の一つです))で成し遂げた実力ミュージシャンでした
キャンディーズを評価するとき欠かせない観点は スクールメイツ出身であることです 東京音楽学院在籍者から選抜されたのがスクールメイツです キャンディーズはさらに その中からオーディションを経て結成されました((最初はNHKの番組「歌謡グランドショー」のマスコットガールとして採用された3人です キャンディーズというグループ名もこのときに付けられました オーディションというのは番組出演時のことでしょう
ハリウッド映画はプロデューサー・システムなので 出演者もスタッフもオーディションを受けなければなりません オファーの仕事なんてごく一握りの人です NHKも番組制作はプロデューサーが全権を持っていて オーディションがあります(いちど合格すれば他の番組にも出られますが)
ナベプロとしては最初から この3人をグループで売るつもりだったと思います スクールメイツ時代から大変仲がよく いつも3人一緒だったようで ♪なぜか気が合うて別れられぬ まさに同期の櫻でした)) 3人は正当な音楽教育を受けた確かな歌い手なのです
身長と体型から3人ともさほど声量はありません 個性を打ち出す歌い方ではなく どちらかというと歌のお姉さん優等生の上手さです それだけに3人のハーモニー(協調性)で楽曲を表現します
そこに音楽表現のダイナミズムが生まれます 活動後半期の「やさしい悪魔」あたりになると 極めて高度なコーラスの完成度を見せます 二十歳そこそこの方々に対して適切ではないのですが 円熟の境地に達しているという感じです
キャンディーズとブランディング
ブランディングでもっとも大切なのは 従業員の意識の持ちかたと顧客を大切にする姿勢です(コーラスグループでなくても 従業員は最大・最良なメディアです) 社是・社訓ではない マニュアルでもない 数字に表れないエモーショナルなうねりです((以前ボーカルが加わったジャムセッションを聞いたとき ジャズボーカルは楽器の一つなんだなと感じました その線上にスキャットがあるのではないでしょうか
コーラスグループも同じ気がします バックバンドとの呼吸が重要ですし 一方で実力のある歌い手ならア・カペラも成立します 歌も他の楽器と同等のパートなのです)) 従業員の意識が 立ち居振る舞い・言葉の端々表情にも如実に出ます そして顧客に伝わるのです
近ごろは ブランディングを標榜するコンサルタント会社がみられます 以前はやったCIと同じく ブランディングには経営層の承認が必要です コンサルティング会社にとっての客は社長なのです 社長の判子がもらえれば商売は成り立ちます そこから先の従業員やエンドユーザーを考慮する必要はありません 現場を顧みないプランニングは 経営層の受け狙いの御為倒しとなります
キャンディーズは 自分たちの商品特性とライフサイクルを正確に理解していました 一度できたブランドにいつまでも縋らない 最高の状態で解散することを最初から考えていたそうです 自分たちで築き上げたキャンディーズであるからこその決断です((3人が東京音楽学院に入学したのは1969年から1970年 キャンディーズとしてデビューしたのが1972年 レコードデビュー1973年ですから 2〜3年間音楽の勉強をしてきたわけです デビューしてから3年間は全力で頑張ると決めたのも そのへんから来ているのでしょうか
中学生から6・7年間 青春のすべてを音楽に捧げてきたのです 「普通の女の子(の生活)に戻りたい」は 彼女たちの切実な気持ちが吐露された言葉です 今と違う生活に憧れる若い時期はあります 普通の感覚を持って自分の人生と真剣に向き合っていたということです))
ブランディングとは お客様に商品のファンになっていただくことです キャンディーズには 全キャン連というファンの全国組織まで 自発的に生まれました ファイナルカーニバルに向けてのキャンペーンでは 3人の意志をファンが支えて デビュー以来最大の盛り上がりを見せました
解散の宣言をまず観客に告げたのは しっかりと顧客に向き合っていたことを現します その真摯な姿勢にファンが呼応し共鳴し うねりを生じたのです
こうして今に語り継がれる キャンディーズ1676日の軌跡が生まれました お客様(ファン)とともに物語を紡ぎ出すことが すなわちブランディングです
キャンディーズの自立精神は 所属プロダクションを動かし 顧客は自ら参加し エバンジェリストとなりました 図らずもブランディングの成功事例となったのです
キャンディーズの意識の高さに加え 音楽プロデューサーの力量にも素晴らしいものがありました いま楽曲を振り返ってみると すべて夢見る年頃の おとぎ話のような恋を歌っています 洗練された曇りのないハーモニーが清々しい 3人のイメージを生かした あたかも等身大の日常を思わせます((「ロマンチストな私ラン ちょっとボーイッシュなミキ ちょっぴりセンチなスー」という惹句が示す それぞれのキャラクターに ファンは自分の思いを仮託します 際立つ個性がない3人は イメージが抽象化した面があります 当時のファンも節度を保ち ナイトを任じていたかのようです ほどよい距離感を持ち 身近なようでいて 現実にはない世界観を形作ることになります))
しかも デビュー時17・8歳〜解散時21・2歳という 少女から大人へ移り変わる 彼女たちの実年齢に合わせるかのように 曲調・内容が少しづつ成長しているのです 当時のことですから むろんブランディングなどという言葉はありません しかしブランドのストーリー作りという意識は持っていたでしょう((はじめの頃のコンサートでは ミュージカル仕立てのキャンディーズ物語といった寸劇をやっていました 内容はキャンプ場で知り合った3人が 歌手になるためオーディションを受けるが 一人が間に合わなかったみたいな アイドルにありがちなものです(実際に藤村美樹は1年遅れで東京音楽学院に入学しています) これが本格的な歌唱力を身につけるに連れ コーラスグループとしてのストーリーとなっていった))
キャンディーズの後
キャンディーズは1970年代後半に活躍したグループです 当時はヒットチャートやマス媒体での人気が指標です いま考えてみれば 日本の方向性が見失われつつあった 高度成長期が陰りを見せ始めた時期です
ナショナルプロダクツをマスマーケットで売ることに疑問を持たない 拡大と売上至上主義 広く薄く商品を売りさばく 数字を持ってこいの数の論理が まだ罷り通っていました 芸能界ではピンク・レディーが 大量露出によるマスマーケティングの代表でした
そんな中でキャンディーズは 一部の熱狂的なファンに支えられた独自の存在でした 最初からコアな層を狙ったわけではありません 彼女らのひたむきな姿が共感を呼び起こしたのです((この3人でなければキャンディーズはなかった それぞれのソロを聴くと歌い方・声質はかなり異なります それが一人の声とコーラスの声を使い分け ユニゾンは一つの歌声になっています 3人の仲は非常によく協調性がある インタビューで 3人そろって同じことを同じタイミングで答えるところなぞ まるで一卵性双生児のようです おそらく楽曲の練習を重ねることで 自然に身についたのだと思います
ライブで歌っているとき時々隣へ視線を向けるのですが この眼差しが実に愛情に満ちています センターがソロで歌っているあいだ両脇の2人が盛り上げようとしている姿も 当人たちはまるで意識してないと思いますが 3人の純粋無垢な人間性が表れています
TV番組の映像で泊まっている旅館の一室に 布団3枚をピッタリ付けて敷いているのを見て 微笑ましく思いました ホテルに泊まるときも ツインルームにエキストラベッドを入れて 3人一部屋だったみたいですね お互いが相手の良さを引き立てるのが 調和そのものです これが音楽面での 美しいハーモニーに寄与していたのは確かなことです))
新時代を先取りしたブランディングの草分けと言えましょう 普通の女の子の生活を捨て 青春のすべてをキャンディーズにかける健気さ 真面目に一所懸命に取り組めば必ず伝わります インターネットのユーザーにも通ずる 高い意識を持つ能動的な層に受け入れられたのです
キャンディーズの解散は 一見唐突に思えます それでも彼女たちの中では予定の行動だったのです デビューから3年間を目安に(実際は4年間の活動です) 終わり方を3人で話し合っていた
年若い彼女たちが何故 そのように考えたのかは分かりません ファイナルカーニバルでの言葉「キャンディーズが始まったときの 純真な気持ちのままで キャンディーズを終わりたかった」に集約されている気がします
キャンディーズのままで終わるには年齢制限があるでしょう やはり一番年下の田中好子が成人するまでですね キャンディーズとしてできること 今の自分たちにしかできないことを やり遂げたと思います((3人は各々の希望を持って音楽の勉強を始めたはずです キャンディーズが結成されたとき 3年間はこの3人でコーラスグループとしてやっていこうと 決意したのではないですか 期限を区切った目標があったからこその切磋琢磨 単なる仲良しグループではあそこまでできなかったでしょう
YouTubeの映像を見ると 初期の頃から「私たちはコーラスグループ」と言い続けています 解散の理由もそれぞれの道を歩むためと明確です 自分たちの信念に従った行動なのです ブレることなく一貫しています 解散を宣言した後のライブ映像を見ると 実に爽やかで迷いのない表情です 3人とも神々しいまでに美しい))
二十歳をめどに次の人生を考えるというのは じつに普通の感覚といえます
3人で改めて社長に挨拶に行った時も 当然のことながら渡辺プロダクションは慰留しました しかし自分たちで決めたことだからと 一途に意志を貫き通したのです 最終的には会社が妥協する形で 半年後のファイナルカーニバルをもって 解散という形になりました
おそらくナベプロに次回の契約更新はしないと申し入れていたと思います 会社としては売れている今やめられては困ると言ってたはずです 当然のことです しかし彼女たちの意志は固く ファンに直接訴えることで打開しようとした というところですか
それまでにも 一身上の都合で引退する芸能人はいました 同じ事務所の先輩であるザ・ピーナッツは「さよならピーナッツ」という特集番組を最後に いわば円満退職しています ファイナルカーニバルはそれに倣ったものでしょう ちょっとした騒動を巻き起こしたとはいえ 3人とプロダクションの関係は良好だったのです
昭和から平成そして令和と時は移り変わり 芸能界とTVも様変わりしました NGTや吉本興業の騒動を見れば 明らかに劣化しています
プロダクションも所属芸能人も 顧客そっちのけで醜い内輪もめを繰り広げています 〇〇〇48はメンバー間の競争をプロモーションに利用していましたし((個人的な好みに過ぎませんが 群舞が嫌いです みんな揃って整然というのが北朝鮮やSGIのマスゲームを連想させるのです 連やグループの中で序列が形成されているのだろうな よさこいソーランや阿波踊りを見ていると 悪達者という言葉が思い起こされます 民謡流しはあんなものじゃなかった 見得を切ったりしません
TVCMも意味なく群がる図が見られる とりあえず目立てばいいという発想ですね 数でごまかすのは おニャン子クラブあたりから始まったのでしょうか モーニング娘。からフォーメーションダンスに移行してきました その後に登場した二番煎じ三番煎じは 女歌舞伎の出来損ないです インカムを付けているのは たぶん口パクのためなのでしょう(マイクは死んでいるが音は聞こえるのではないか))) 楽屋落ちは吉本の芸風ではあります こうなるのは必然だったのかも知れません
キャンディーズとナベプロ
キャンディーズができたのは 渡辺プロダクションの力によるものが大きい そして解散を認めた会社の度量も称賛すべきです((渡辺プロダクションや東京音楽学院の内情は知りません ジャズから始まっているのですから自由な気風があったと思います 所属タレントを束縛することがなかったのではないか
キャンディーズのシングルは最終的に渡辺晋・美佐子が認めたものです レコーディング後に作り直しもいくつかありました 主にキャンディーズのイメージを維持するための注文です
渡辺プロダクションが ワタナベエンターテインメントと組織変更するとともに 東京音楽学院も事実上活動を停止したようです ひとつの時代が終わったということか))
渡辺晋はジャズマンの地位向上のため プロダクションを設立しました 渡辺美佐は東京音楽学院を作り 日本のジャズ・ポップスのレベルアップを目指しました
東京音楽学院の選抜チームであるスクールメイツから キャンディーズは生まれました おそらく成績優秀でもあった3人が 渡辺晋・美沙子夫妻の志を継承していたのは 自然の成り行きだったといえるでしょう((キャンディーズは洋楽のカバーにも積極的でした バラード調の歌い上げる曲はさすがに上手い 英語の発音やロックのノリはオリジナルと違いますが 別に器用に歌真似をしているわけじゃなくて 自分たちの解釈で歌っています 贔屓目かもしれないが本家よりいいと思いますね))
1978年キャンディーズ解散の頃は すでに渡辺晋が病に倒れていました いま渡辺プロダクションは衰微しています そして芸能界とTV番組制作も かつての勢いはありません ついに日本のエンターテインメントは根付かなかったのです((高い歌唱力に可憐な容姿があり どんなステージも全力で一所懸命に歌っている そのうえ伊東四朗・小松政夫といった芸達者な面々と絡んで ドタバタコメディーまでこなす 多芸多才というよりサービス過剰なエンターテイナーです 何事にも体当たりで取り組む むしろ不器用な生き方です
こんな3人が出会いグループを組んだのは どのような力が与ったのでしょう 時代によるものでしょうか 二度と現れない事象であるのは確かです キャンディーズは昭和が生み出した 類まれな出来事だった気がします
同時期にアップルズ(EVE)という実力のある姉妹トリオがありました 音楽性は抜群で英語の歌も実にうまい 振り付け等パフォーマンスも堂に入ってます だが手堅く器用にこなしているという印象が拭えないのです スタジオミュージシャンの仕事が多かったようです))
カラオケが広く一般に普及したのが1980年代です TVの歌番組が消えたのも同時期です 以来プロフェッショナルな芸能から 素人芸がもてはやされ浪費されるようになった気がします((専門的なことは分からないのですが キャンディーズの歌は副旋律によるハーモニーとともに オブリガート(対旋律)が特徴なのだそうです しかも主旋律を歌う人が曲の途中で変わったりする そう言われて聴けば確かにその通りですね
○○と■■ ✕✕&▲▲といったグループ名は メインボーカルが固定していて 他のメンバーはバックコーラスです キャンディーズは3人が同列で 曲によって主旋律・副旋律・対旋律の役割を交代します ユニゾンがしっかりしているからこそできることです))
(※10月3日追記=キャンディーズの曲で最近「インスピレーション・ゲーム」が気に入ってるのですが 恐ろしいほどの洞察力の文章がありました ギャランティーク和恵さんの キャンディーズ「インスピレーション・ゲーム」で到達したコーラスグループとしての完成形 です
女性の持つ強さや潔さ、そして静かな狂気と情念の世界がキャンディーズと化学反応を起こして・・・
私ではとてもここまで読み取ることができない この人たちは男と女の情念を両方わかるのでしょうか キャンディーズは甘い声質から 大人の歌は難しいかと思っていましたが 彼女たちなりに歌いこなしています このことを化学反応と言ってるのかな 同じく阿木燿子作詞の「グッド・バイ・タイムス」は小粋です コーラスグループ・キャンディーズの一面を表現しています
キャンディーズは 楽曲の歌詞をとても大事に歌っています 歌詞をもらったとき 3人で一拍の乱れもなくなるまで読み合わせし 内容を完全に共有した上で まずユニゾンで歌う 3人の声が一つに聞こえるまで歌い込んでから コーラスワークに入ったそうです((どの楽曲だったか コーラスパートを当日スタジオで初見にもかかわらず 3テイクでレコーディングしたという伝説があります ユニゾンで完璧に歌い込んでいるからできる事です
プロの歌手であるなら 普段の会話と歌うときは発声がまるで違います 歌というパートを担当しているわけで 自分自身が楽器なのです さらにソロとコーラスでは 声が変わってきたと言ってましたね)) 高・中・低音のパート担当まで3人で決めた 語尾に情感を込めて歌えるのは その姿勢の成果と思います MCでの言葉遣いの丁寧さにも通ずる精神ですね((吉田拓郎+キャンディーズの取り合わせは 実にいいですね 拓郎の世界が3人のコーラスと相まって まさに化学反応を起こしています ソロでは表せない情緒です 昭和歌謡曲の完成形の一つといってよい
「アン・ドゥ・トロワ」はエレガントで これぞキャンディーズと言いたい ロングドレスがよく似合う いかにも女声コーラスグループといった曲 素直なハーモニーが実に美しい 吉田拓郎が思い描くキャンディーズのイメージを表現したのではないか また他面でキャンディーズというグループ名から かけ離れていく曲調でもあります 解散を暗示する象徴的な名曲です)))
(※10月11日追記=ファイナルカーニバルの映像を見ました ステージに立つ直前 伊藤蘭はしきりに武者震いしています(当日寒かったからではない) オープニング前奏が始まった途端 田中好子は彼方を見る目となりました 藤村美樹は怖い怖いと言い続けます(恐怖を知る者が勇武を持ちます) 3人ともハルモニアの娘たちムーサから 戦いの処女神アルテミスに変身したと見えます 崇高な姿です)
(※12月22日追記=伊藤蘭さんが歌手に復帰するのはどうでしょうか 非常に歌のうまい方でした ファイナルカーニバル時 ウェディングドレス風な衣装で きれいな頭声を披露していました 今の年齢にふさわしい曲を歌うのならいいことだと思います キャンディーズの曲だけは封印してほしかったかな
3人揃ってキャンディーズですし 40年のブランクと年齢に抗うことはできません 声の張りも伸びも かつてのようにはいかない まぁTV局やレコード会社・プロダクションの意向だったのでしょう ファイナルカーニバルの何週間か前 ラジオ番組で田中好子さんが「燃え尽きて きれいな灰になりたい」と言ってました(その通りになってしまいました) キャンディーズは あのとき燃え尽きたのです
あれから40年あまり経ちました 40年は長い キャンディーズ時代は10分の1の4年半です 当人にとって長い人生のうちの1ページに過ぎない そこまでの思い入れはないかも知れません 歌手復帰の理由が子育てが一段落したからと いたって普通の感覚です 家庭と家族を何よりも大事にする健全な生き方ではあります)
(※2020年3月25日追記=伊藤蘭さんのキャンディーズナンバーを聞きました 往時と変わらない若々しい歌声です 40年のブランクを感じさせない しっかりした歌唱力の持ち主です だからこそ歌に再挑戦したのでしょう
しかし… やはり釈然としません ソロで歌う曲ではないですね バックコーラスをつけていましたがまったく違う 3人のコーラスはもっとドラマチックでした((カバー曲シュガー・ベイビー・ラヴは 本家のルベッツより上手いと思います 藤村美樹の歌唱力に加え高音のコーラスが素晴らしい ルベッツのボーカルは一人なので比べてはいけないのですが 厚みが違うという感じです 他にHere There And Everywhereなどは みごとにキャンディーズの世界を描き出しています この囁くようなスローな曲 本家を超えている)
(※2021年8月24日追記=相変わらずキャンディーズを聞いています 何かの映像で藤村美樹さんが「キャンディーズサウンド」ということをいってました かなり初期の頃から 自分たちの音楽世界を目指していたのです キャンディーズサウンド(キャンディーズワールド)が表現できたのは ひとえに3人の仲の良さだと思います
音楽のことはよく分からないのですが 歌唱力のある人ほど自分を表現するのではないでしょうか アリアを歌う人が集まってコーラスをやっても纏まらない気がします かといって平均的な歌唱力でコーラスグループを作っても 平板なバックコーラスで表現力が不足しそうです
キャンディーズの特徴はユニゾンにあります 歌詞を大事にすることと協調性が相まって 3人の歌声が完全に一つになっているのに それぞれの声を聞き分けられます 歌謡曲風な曲を歌っているとき 小節やビブラートまで完璧に一致しているのです これは技術だけでできることではない)
(※2021年9月3日追記=YouTubeでキャンディーズの映像を見ていると コメント欄にPerfumeと比較する意見がかなりあります Perfumeのことをあまり知らないのですが コンセプトは違うんじゃないでしょうか 共通点は3人ということだけの気がします
振りのユニークさが特徴のようですから むしろピンクレディーの方に近いのではないか 最初にコンセプトありきでグループが作られたのも ピンクレディーからです
キャンディーズの始まりは やはり仲良し3人組の出会い 仕組まれたものじゃない あの3人だったからのキャンディーズであって オーディションでメンバーを集めてできるものではない)