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タグ: 物流

商店街

海外と日本のショッピングストリート
ヨーロッパのショッピングストリートは 中央広場(プラザ)へ向かう放射状の通りに形成されている 中央広場には必ず教会があり 教会の尖塔は街並の重要な点景となる ヨーロッパの都市部には 景観を維持・保存する目的で高さ制限があるため スカイラインの上に常に尖塔が浮かび上がる 教会を目指せば町の中心に行き着く ランドマークだ

日本の商店街でも門前町から始まったものはあるが 多くの寺社は町の中心ではなく外れに立地する 修行の場や悪鬼を塞ぐ鎮め石等が祀られた場であるから 街道筋あるいは川筋に建てられるものだ(五重塔はやはりランドマークである[01] … Continue reading) ヨーロッパでは 生活すべての中心にキリスト教がある したがって町の中心も教会になる

ショッピングストリートのモール化
ドイツのショッピングストリートには ラウベンと呼ばれるアーケード(通り全体を覆うアーケード街ではなく歩道に屋根がある形)が設置されている そして街路は曲がりくねっていて 囲まれた空間を形成する

これがおそらくモールの始まりだろう さらに歩行者と車の分離 スピードの制限による共存などの施策が モールに必要となる
日本のほとんどの商店街は 街道筋に形成されている 生活と密着した商店街 トランジットモール(抜けられます)だ 雪国の雁木はラウベンと同じ機構を持つが 町並みの構造上モールはできにくい

ヨーロッパ都市の道路は 馬車の通る車道と人が歩く歩道に分離されていた(理由は事故だけでなく 馬糞の問題だったようだ) 日本の街道は徒歩通行のためだった 乗用に牛車はあっても 馬車が使われることはなかった 物流は船が担っていた[02] … Continue reading
そのため 旧街道では歩行者と車の分離が難しい 車を閉め出しても活性化に通じることはない 共存でなければならない 商品の搬入などの物流を阻害してはいけない 歩行者天国ではだめなのだ

ショッピングセンター
日本のショッピングセンターに○○プラザの名が多いのは ヨーロッパ等の教会を中核とする広場から発生した市場に由来する ただし名前を拝借しただけでコンセプトは曖昧だ もちろんセンターといっても中央広場にあるわけでない
中核店(大型店)のないスペシャリティセンターには テーマに基づくテナントミックスが必要 明確なコンセプトによって 街並のアイデンティティが生まれる

ダイエーの倒産に象徴される ビッグストアの終焉 量から質 衆から個への転換が始まって久しいが 自覚している商業施設は少なく 有効な施策もみられない
昭和60年代に策定された再開発(この施策自体に疑問がある)で ビッグストアを誘致する計画は ことごとく破綻している ダイエー そごう 西武 長崎屋 十字屋が主な中核店だった この顔ぶれを見れば失敗する理由がわかるだろう

再開発で衰退する商業
不動産投資型の大型再開発が行き詰まると 今度はソフトだの文化などという 取って付けたような惹句を持ち出してくる その究極の姿が ゆるキャラなのだろうか いくらなんでもお粗末すぎるが
日本の再開発やショッピングセンターは すべてコンセプトは後付け まず容れ物を作る 次にテナントを誘致する そして適当な名称のイベントで集客する テナントミックスや街のアイデンティティは考慮されないままに

しかし 人が集まれば物が売れるわけじゃない とくに行政主導のイベントは予算を消化するのが目的で 利益を出す必要はない 経済波及効果という詭弁で数字合わせすれば仕事をしたことになる
結局終わってみれば 潤ったのは行政の隠れ蓑である第3セクターと その周辺の利権に群がる 様々な業者・政治家ということだ

路地裏・横丁・小路
かつて街道筋にあった繁華街は 地方自治体主導の再開発によって駅前に移り 次に民間デベロッパーによる大型ショッピングセンターが郊外に建設された
そして地方都市のショッピングストリートは 単に車が通過するだけの道路になり 買い物客(歩行者)の姿は消え去った

カオスと卑近な猥雑さが 路地裏・横丁の特徴であり 活況の源だった メインストリートに交差する形か並行する形で路地裏・横丁があった
メインストリートと横丁・路地裏が形成するコミュニティに裏町文化が生まれる まずコミュニティができて そこから文化が発生するのである 机上のプランニングで作るもんじゃない ゆるキャラは文化でも賑わいでもないのだ

註釈

註釈
01 ヘッダーの写真は横浜三渓園です 原三渓は絹糸の輸出で財を成しました 絹糸は群馬県で生産され 八高線で八王子に集荷し さらに根岸線で横浜まで運ばれました
戦国時代から江戸時代 絹糸・絹布は中国から輸入される高級品でした 日本から海外に輸出されるようになったのは 機械紡績が始まってからのことです
02 農耕に使ったり荷馬車や 騎乗することはあったが なぜか日本に乗用の馬車はなかった ヨーロッパの馬車は馬の代わりにエンジンを積んで自動車になり(エンジンの出力をホースパワーhpというのはその名残) アメリカの駅馬車は大陸横断鉄道になります もしかしたら乗用馬車はギリシャ・ローマ時代の戦車から来ているのかも知れない 日本では地形から戦車は使いにくく 流鏑馬止まりです
これも地形から来たものですが 日本の物流は船でした 海岸沿いの北前船は誰でも知っています 港に下ろした荷は今度は川船で内陸に運ばれます 明治時代に鉄道が敷設されました これは船の代わりに物流を担うためでした そのため線路は川沿いに敷かれ 駅は元船着き場があった場所です ですから鉄道の駅はだいたい町外れにあります
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ユーザーエクスペリエンス

昔は郵便小包を出したら箱や中身が壊されるのを覚悟しなければなりませんでした かつて物流は国鉄の貨物便が主でしたから 郵便小包も貨物列車で運ばれました
郵便局から国鉄の手を経て小包が運ばれるのですが 全逓と国労の荷物の扱いはそれはひどいものでした 手で持って運ぶことをしません 抛り投げるのです その様子を何度も目撃しました

郵便小為替の抜き取りもけっこう頻繁にあったし 郵便小包の配達を時間指定して その通りに届いたことはありません 自分に都合の良い時間で配達し平気で不在票を入れます しかも再配達ではなく 印鑑を持って本局まで取りに来いと書いてあります

「ユーザーエクスペリエンス」とかいう よく分からない言葉があります UXと略称され 直訳すれば「利用者の体験」です 郵便小包では日本国民全員が大変な利用者の体験をしてきたわけです
旧国鉄と旧郵政省だけではありません 日本の家電メーカーにとってのお客様は 利用者(ユーザー)ではなく問屋や小売店でした(ナショナル店会・東芝リンクストア・日立チェーンストールなど) 当然「ユーザーエクスペリエンス」に思い至ることはできません

日本の企業にありがちな 痒い所に手が届く気配りが「ユーザーエクスペリエンス」じゃない 単なる操作性とか使い勝手を意味する「ユーザーインターフェイス(UI)」でも説明できないものです そんな小手先のことではない
「ユーザーエクスペリエンス」はユーザーが自らの判断と経験で 主体的に製品・サービスを利用したいと思う価値観の共有です 顧客満足に近い概念かもしれない

マーケティングデザインとユーザーエクスペリエンス

インターネット・マーケティングの課題は「問題の解決方法を提案」でなく 「真の問題点を見いだす」ことです つまりソリューションではない

この真の問題点は マーケットリサーチやグループインタビューといった 旧来のやり方では見つけられません またビッグデータとかいうものでもだめです
なぜなら真の問題はユーザーよりも たぶん企業側にあるのです だからいくらリサーチしても どのような統計数字を持ってきても問題点は見えてこない 問題点が明らかにならないから方針が定まらないことになります

旧メディアを使う広告・広報・販促等のプランニングは クライアントから与えられた事案の最適解を提案することが主眼でした 問題点は最初から明確に示されます
そこには強大な影響力を持つマスメディアを通じて コンシューマーの行動をコントロールできるとの前提がありました 問題点に疑問を持つ必要などなかったのです

インターネットの時代 この大前提は崩壊しつつあります(最初からそんなものは幻想だったのかもしれません) 旧メディアの権威失墜が大きな要因です 新聞にニュースは見当たらず 雑誌は存在意義を失い TV番組は映像作りを放棄してしまいました
マスメディアが情報を発信する オーディエンスは受け取るだけ という図式はもはや成り立ちません

一方的な情報発信でない双方向時代のマーケティング事案は テクノロジーなんかで解決できません ヒューマンリレーションが大きな力を持ちます 人の心に訴えかけること 互いを尊敬することが大切です
この情勢を理解できない 旧来型の思い上がったマーケティングが ユーザーから手痛いしっぺ返しを受けています ユーザーと信頼関係を築けなければ インターネット・マーケティングは成功しません

お客様指向ってあり得るでしょうか お客様のご意見を製品開発に生かす? そうではない お客様とどのような関係を築くかが大事なんじゃないか つまり企業姿勢や製品開発の視点に好意と好感と信頼を持っていただくことです

iPhone iPad アップルのデザインは まさにユーザーエクスペリエンスを目指したものです 端正な外観 気品ある質感 なめらかな使い心地 これらは別にお客様の声に耳を傾けたり ニーズを汲み取った製品開発ではありません
さらにリンゴのマーク ガラス張りのアップルストア なによりも the legends of Steve Jobs すべてがマーケティングデザインとなっています
スティーブ・ジョブズの高い志が生み出し 所有することがユーザーの意識の高さを示す そしてユーザーは自らのエクスペリエンスを伝道します

近江商人の三方よし〜売り手よし・買い手よし・世間よし〜の精神に通ずるかもしれません 商の本道に立ち返るといってもよいでしょう[01] … Continue reading 誠を貫くのがインターネットマーケティングのあるべき姿なのです

註釈

註釈
01 さる実業家が松下幸之助氏に儲けるコツは何かと聞いたそうです 答えは「ザルで水を掬うようなもの」でした その人は千里の道も一歩からと受け取ったようです 儲けは後からついてくる ザルから溢れる水は買い手や世間に還元されるのです とくに世間が大事です 松下氏が晩年私財を投げ打って PHP研究所や松下政経塾を作ったのは そんな志からです
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Amazonの正体1(カタログショッピング)

Amazonはきわめて洗練されたカタログショッピングです といっても現在の形になったのは最初から意図していたことではないと思います インターネットに特化した流通網を築き上げるという 揺るぎないコンセプトを保ち続けた結果です ぶれない価値観を持てば どのような技術革新・変遷があろうと柔軟に対応していけるのです

通常(旧来=紙媒体)のカタログショッピングでは 複数のカタログを制作します 男女別それぞれにシニア向けとヤング向け 都合4種類が作られたり あるいはF1層に向けたカタログなどです いわゆるマーケット・セグメンテーションです(なんか用語が古めかしいですね)
これらのカタログを 場合によっては各シーズン年4回作ったり イベントごとに特集号を作ります 月刊誌の体裁を取るものもあります もちろん紙メディアですから編集だけでは済まず 印刷と配送が必要になります

2020年12月10日追記=IKEAが70年続き全世界で2億部の発行部数を持つ 紙ベースのカタログを廃止するそうです 実店舗での販売が主だった小売店ですが インターネットでの売り上げが急速に伸びたのです 時代の趨勢ですね)

Amazonは紙メディアのカタログを作りません ホームページに商品情報を配置しています 大きな特徴は ただ単に紙がwebに置き換わった(印刷・配送費を節約した)だけのものではないことです
web上の仮想店舗は フィジカルな商品の在庫状況を反映しています さらに商品の受注・物流そして販売・顧客管理まで すべてインターネットを介して 一元的なフラットな流通網を形成しているのです クラウドの観念を最初から持っていました
Kindleにいたっては 商品そのものまでがフィジカルでなく仮想化されます これは物流・在庫経費を究極に簡素化するシステムで いかにもAmazonらしい発想(商品)です デジタル化された情報とフィジカルな物流が一体化されているのがAmazonの正体といえます

紙メディアのカタログは いったん印刷したらもう変更できません 間違いがあっても正誤表を後で送るぐらい 商品の差し替えも価格の訂正も不可能です 次回カタログ配布までの時間がそのまま在庫に繋がります
web上のカタログ(仮想店舗)なら いつでも臨機応変に商品の変更が可能です その上レコメンドエンジンにより カタログは個人向けにカスタマイズされます セグメンテーションなんてものじゃない 個人のインタレストに応じたカタログが生成されるのです

このパーソナライズされるカタログはビッグデータがベースです そして将来は 個人のインタレストに応じたデータに基づいて 商品の仕入れや物流まで管理することができます(現状ではまだそこまでいってないと思いますが「Fire phone」は始まりの印かもしれません)
いずれは個人専用の仮想商品棚ができ 好みに応じた商品がすぐ近くのデポに置かれることになるのです そうなると もはや仕入れ・在庫・物流の観念もなくなります いってみれば 仮想空間・現実空間すべてがAmazonの倉庫になるのです

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