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野沢菜漬 ネーミングとブランディング

商標でないネーミング

野沢菜・広島菜・高菜が三大漬け菜[01] … Continue readingという風説があります 誰が言い出したか どんな根拠かは不明です それがもっともらしく流布されている 高菜は古くからの呼び名ですが 野沢菜・広島菜は地名を付けたもので近年の呼び方です
広島菜の名は明治後期かららしい 野沢菜といわれるようになったのは ごく最近のことです 野沢温泉の観光キャンペーンで 野沢菜漬けのネーミングができたといいます 温泉地のキャンペーンが成功したかどうか知りません 副次効果として野沢菜漬けが全国に知れ渡ったのは確かです[02] … Continue reading
野沢菜の生産量は長野県が過半数を占めます でも野沢で冬期の漬物に使われるのは 徳島県産だそうです(野沢温泉の温泉水で洗えば 野沢菜漬けだなんて言い訳してますが)

本名はカブ菜

隣接する新潟県でも昔から このアブラナ科の菜っ葉が漬け物にされていました もっぱら漬け物用なので「漬け菜」といってましたが 別名を「カブ菜」ともいい 根っこには小さな蕪が成っていました
漬けるときは 固い蕪の部分を少し削り落とします ちょうど京都のスグキ漬けのようなやり方です カブ菜漬けは茎を食べるものだからです(スグキも酸っぱい茎からきたのではないでしょうか) 確かなことは分かりませんが スグキの近似種であるカブ菜は 京都から伝えられたとも言います
京の人たちは相変わらずスグキ漬けと言ってますが 新潟県でも最近はカブ菜漬けを野沢菜漬けと言うようになりました いま漬物用のカブ菜を収穫するときは 蕪根を残して葉柄だけを刈り取ります 野沢菜の名が一般的になってから 根に蕪があることを知らない人が大半かと思います

塩漬けが正当

野沢菜であろうと広島菜であろうと高菜であろうと 本来は塩漬けです いまの地名を冠した漬け菜は 醤油ベースの調味液に浸したものが主流です 浅漬けと称していますが 漬け物とは言い難い和風味マリネですか いわゆるサラダ感覚なんでしょう
カブ菜は初冬に塩漬けします 乳酸発酵し塩味が馴れ酸味が出たときが漬け菜(カブ菜漬け)の味です 菜から出た水分が上がってきて 表面には氷が張っています 冬のあいだ発酵はどんどん進み 時間が経つにつれ味わいも変わります

古漬けの味

雪が融けて春先ころには酸っぱすぎて そのままでは食べられないほどです そこで古漬けの漬け菜を水で煮て 酸味と塩味を和らげます 新潟の郷土食である煮菜(にいな)です 料理ともいえない質素で簡単 そのままの名称です 煮るときかなり匂いますけど
煮干しを使って煮たり 打ち豆その他を入れたりと アレンジする家もあります 私はただ水で煮ただけのものが好きです 塩と乳酸発酵で引き出された カブ菜の持ち味は 驚嘆するほど奥深い旨さです 人工調味液なんかでは出せない 滋味を持つ一品です

出し味の野沢菜漬けと称する浅漬けは 調味液に浸しただけですから 時間が経っても酸味は出ず 塩も利いてないので 発酵ではなく腐敗するだけです これを煮てはいけません 極限まで発酵した乳酸菌の力あればこその煮菜です[03] … Continue reading

註釈

註釈
01 三大〇〇 三位一体 三羽烏 三はそれぞれ並立するイメージがあります 三角形や三点支持は安定していますから 昆虫の六本足も三本づつの三角形です(三角を組み合わせた六芒星の形) 二だと 両雄並び立たずとか竜虎相搏つといった 対立の構図になります 三つ巴の争いなんてのもあるか
02 野沢菜は商標登録されてないと思います このように地名を冠したネーミングが一般に使われれば ブランディングとなります 「くまモン」は商標登録されていますが 使用料がいらないため 広く使われることとなりました
古くはディズニー近年はサンリオなどの キャラクター商法と反対の行き方です マネタイズするのが目的でないので 直近の利益を求めることはできません
03 古漬けを料理に使うのは珍しいことではなく 高菜の塩漬けを油で炒めてもうまいし 中華料理によく使われます ドイツの郷土食ザワークラウトは 鯉・鰻の煮付けやシチュー・炒めものなど 旨味・酸味・塩味の漬け汁とともに さまざまに利用されます

カテゴリー: ブランド・ブランディング 日本の伝統・本流