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キリシタンバテレン

イエズス会

もし織田信長が天下を取っていたら 日本は植民地化されていたかもしれません 信長はイエズス会と組んでいました あるいはイエズス会に利用されていた イエズス会のお先棒を担いでいたと いえるんじゃないか
戦国時代には キリシタン大名がかなりいました イエズス会によって 改宗したのですが 大名からすれば鉄砲とバーター取引のつもりだったでしょう 戦国大名で最大の得意先が信長でした

宣教師は植民地政策の先遣部隊であり 宣撫担当でもありました 支配層にキリスト教を布教し 利益供与します やがて武力によって侵攻し 支配層に特権を与え二重支配・間接支配するのが常道です
信長はイエズス会に協力することで 自らの勢力伸張を図りました キリシタン大名を認め多くの鉄砲を手に入れたのです[01] … Continue reading もっとも南蛮かぶれではありましたが 教化はされてないみたいです
それでもイエズス会の意を汲んでか 比叡山焼き討ちや一向宗へなどあからさまな宗教弾圧をやっています

九州・堺ではうまくいくかに見えました しかし日本は明確な身分制度がない下克上の国です 大名たちは支配階級ではなかったのです
信長が本能寺に倒れ イエズス会の日本侵略は頓挫しました 後に立った豊臣秀吉と徳川家康は見事でした キリシタンを禁教としたのです
この対応がなければ 日本も他国同様に植民地化されていたかもしれません イエズス会の日本侵略は 島原の乱鎮圧でようやく終焉しました[02] … Continue reading

東南アジア、中国

東南アジアでは外にシャム王国(タイ)が植民地化から免れています タイは敬虔な仏教の国です 侵略しにくかったと思われます また山田長政や津田又左右衛門が日本兵を率いて アユタヤ王朝を侵略しようとしたスペイン艦隊を撃退した史実もあります 和冦の末裔です

ヨーロッパ諸国による植民地経営は キリスト教と深い関連があります 絶対的で唯一の権威・正義に基づくのです 根底に選民意識がありますから 異教徒を支配することにためらいはない
日本には八百万の神々がいます 柔軟で多様性の国なのです 下克上の精神もそこから来ている 仏教もまた数多くの仏がおわす曼陀羅の世界です タイも多様性の国なのでしょう

仏教は中国から朝鮮を経て渡来したと 教科書に書いてありました しかし中国大陸・朝鮮半島とも仏教は根付かず 単に通過しただけです
大陸・半島は 覇王や両班が支配する身分制度・階級制の国だったから 多様性を認めません それだけに植民地化しやすかったのです 半島はキリスト教で教化されました

インドの独立を契機に ヨーロッパ諸国は植民地から手を引きました 代わりに中国の覇権主義が 国内ばかりか周辺国にも及びはじめています 従来は陸続きの他国・他民族の支配だけでした 今は海洋進出が顕著です
フィリピンは中国の軍門に降りそうです フィリピンがキリスト教国となっているのは 大航海時代の航路に位置していたことが一つの要因です 現在でももちろん軍事的な要衝に変わりありません フィリピン近海の南沙諸島に軍事基地を作れば 台湾と沖縄の侵略は極めて現実味を帯びてくるでしょう

中国の覇権主義

台湾はもともと大陸の統治下ではありません 蒋介石一統が渡ったため ここを統治しない限り国共内戦は終わらず 中国の覇権が完成しないのです また太平洋進出の障碍であり足がかりでもあります
現在の中国大陸は 共産党の一党独裁という体制をとっています 中華という名が示すように 漢民族にも選民意識があります 周りの国を属国と見なすのは キリスト教国と同様の発想です
共産主義を標榜しているといえ 毛沢東は戦略として採用しただけ 目指すはソ連のような強権に基づく連邦国です 中国は資本主義どころか封建制ですらなかったのです なのに社会主義革命が起きた? スターリンも同様に共産主義を利用していました ロシアは農奴の国で資本家なんていなかったのです

共産主義もキリスト教の教義をなぞった善悪二元論ですから キリスト教の一派といえます[03] … Continue reading ソ連からロシアに戻るとプーチンはロシア正教の信者を表明しました 宗派が変わっただけです
ロシアと違い中国に一神教の歴史はなく 拝金主義の国らしく[04] … Continue reading軍事とともに経済的にも周辺を支配しようとしています 海洋進出・制海権確保はそのために必要な政策・軍略です

註釈

註釈
01 鉄砲だけでなく積極的に海外と交易し 楽市楽座のように流通の活発化も推進しています これに取り入り利用したのが千利休です 豊臣秀吉がのちに利休を誅伐していますが イエズス会と通じていたのかもしれません イエズス会の根拠地は堺に置かれていましたから 十分あり得ることです
千利休は茶道を大名に取り入る手立てとし 茶道具を売ることで利益を得ました 秀吉も茶道は認めていますが 大名の趣味ではなく庶民に開放しました
02 島原の乱を重税にあえぐ農民の蜂起としてはいけません 武士階級・農民階級などという身分制はないのです 転封によって新しい領主となった者と旧領主遺民の対立と見るのが正確です たとえば越後でも年貢の取り分を争った上杉遺民一揆が起きています
旧領主はキリシタン大名でしたから 領主から離れ帰農した遺臣も やはりキリシタンでした 主装備が弓槍でなく鉄砲だったのはそのためです 背後に外国勢力があり下克上の精神とは異なる 一揆とは呼べない代理戦争です
03 ものすごく大雑把に言ってしまうと 資本家は悪魔の手先 共産党は教会 資本論は聖書 労働者が信者になると 天使に導かれた人民軍として 共産革命(ハルマゲドン)へと突き進みます ハルマゲドンは未来の最終戦争ですから 現在は共産主義でない過渡期の社会主義ということになります
04 習近平は終身独裁制を成し遂げました スターリンと違うのは 粛清の対象が政敵というより 利権によるカネの独占だということです 拝金主義の面目躍如です
中国人の宗教観は 父祖崇拝と現世利益を求めるのが特徴です 人の生き死にを語らず興味もない 現実主義というか金権主義というか
そして選民意識があります 選民意識は差別主義や覇権主義につながりますが これは天性であって 最初から決まっていることなのです
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食文化

酒の文化

雁屋哲原作「美味しんぼ」第54集《日本酒の実力》が 日本酒に対し誤解を招く内容を描いていたそうです 美味しんぼが参考にした元ネタは 日本消費者連盟が編纂し三一書房が発行した書籍「ほんものの酒を!」です この顔ぶれでは プロパガンダ本といわざるを得ないですね[01] … Continue reading

美味しんぼの作者も編集担当も 悪意や政治的意図はなく 不用意に不確かな文献を援用しただけかと思います[02] … Continue reading ストーリー展開は上手いから多くの読者を持ち アニメーション放映もされた作品だけに 影響も大きく日本酒に対する偏見が広まってしまいました 純米酒信仰もその一つです

美味しんぼの前にも 日本酒を扱った漫画「夏子の酒」が描かれています(こちらはTVドラマ化されました) やはり純米酒信仰と醸造アルコールの歪曲がベースになっているとのこと
この漫画のモデルになった酒は 新潟県の酒店(新津市だったか?)がネゴシアンとして作らせ 漫画・TVによるキャンペーンと出荷調整で値を吊り上げた という話を聞いたことがあります

フランスワインにはヴィンテージがあります ワインは葡萄を絞っただけの単発酵の酒ですから 出来不出来はもっぱら葡萄の良し悪しに頼ることになります 良いワインを作るためには 良い葡萄畑を確保するのが絶対条件なのです
葡萄の作柄は天候その他に左右されるため ワインも出来の良い年悪い年があります 良い葡萄が収穫できた年がヴィンテージ[03] … Continue readingとなります

日本酒も主材料である米の品質は大事です 吟醸・大吟醸に山田錦が使われるのは 大粒で平板状心白であることに加え 硬質なことがあげられます 紡錘状心白の五百万石では50%以上磨くと胴割れします 最近できた新潟県の越淡麗は 完全な平板状(線状)心白で 吟醸・大吟醸酒のための酒米といえます
しかし 日本酒は杜氏の技で作るものですから 米の出来不出来だけで品質が決まるわけではありません とくにに吟醸づくりは細心の注意を払って酒造りをします
麹米に白い花が咲いた状態は総ハゼで 麹菌が表面に成長しているのです 吟醸づくりのための麹米は突きハゼといい 菌糸が虎斑状に米に食い込んだ状態です ただ菌糸が米の中心部にまで入ってしまうと あまり良くありません 吟醸づくりに米粒の大きさ硬度は重要です

葡萄と同じく 米の出来もその年の天候等に影響されます 純米酒となると桶ごとに異なる発酵具合を調整するのは極めて難しくなります 吟醸・大吟醸ならばなおさらです 醸造工程で加える原料アルコールも発酵調整技術の一つです
酒米の品種だけでなく産地も重要です 日本酒にはヴィンテージがないので 毎年一定の品質が要求されますから 一つの産地で純米酒を作るのはリスクを伴うでしょう
なお日本酒の柱造りと同様に ワイン醸造でもアルコール添加の技術はあります マディラワイン・シェリー・ポルトワインは 代表的な酒精強化ワインです

フランスワインのヴィンテージは 結局のところ権威付けであり差別化です 商業主義の表れといえます AOCやソムリエだとかネゴシアンなんかもそうです フランス人の商売上手なところです
日本酒の純米信仰や 大吟醸酒の過剰な精白度競争も 同様に商業主義のような気がします ヴィンテージはなくとも 希少価値を演出しプレミアムを付けて売る例はあります
ワインの世界でも ビオワインだのオーガニックワインだのと 新たな差別化が図られているようです 星座の運行に基づいて醸造するとか言ってますから これも純米酒信仰に近いのかもしれない

精米歩合はどうやって測ると思いますか 精米機の糠箱から取り出す糠の重量で計算します 100kgの玄米を投入すれば糠の重量が50kgになった時点で50%精米となります 精米の熱で水分が飛んだり糠の粉が飛散することも考慮に入れ タイミングを見て精米機を止めます
大吟醸酒で酒米の精白度が競われています 大吟醸は精米歩合50%以下ですが 磨けばいいというものでないのです 30%台・20%台に意味があるとは思えません とくに精米歩合が低いほど密度の粗い部分が多くなり 砕米など無効精米は増えます[04] … Continue reading

ダシの文化

1960年代にチャイニーズ・レストラン・シンドロームという言葉がありました 中華料理に大量に使われる化学調味料が 人体に影響を及ぼすという説です
医学的に証明されてはいないようですが チャイニーズレストランが世界中に広まったことと関連しているのでしょう

2013年和食がユネスコのお墨付きをもらったといって 日本では官民あげて喜びました 他からの評価に一喜一憂している姿は 自国の食文化に自信がないからです これも舶来崇拝の裏返しの姿です
評価されたのはダシ味だそうです 甘・辛・酸・苦・塩の五味に加えるべき第六の味だとか 味の素がいう「うま味」は昆布ダシの主成分グルタミン酸です

世界中に広まっていた中華料理に代わり 和食レストランがヨーロッパを中心に見られるようになりました しかし実態は中国人の経営になる 日本食もどきの紛い物が大半でした
フランス人と並んで中国人も大変商売上手です しかも柔軟な発想で 別に自国料理にこだわることはない 儲かると思えば何でも取り入れます
そのうえ 今まで大量に使っていた化学調味料は ダシ味なので 日本料理に転換するのは訳もないことです

ダシ味はもちろん日本の大切な食文化です でも鰹節ダシが正統などということはない 先に書いた正月料理の福島「こづゆ」は 干し貝柱のダシが特徴です
それにダシの素といって売られているのは 鰹節製造工程で出る煮熟の煮汁が原料ですし 多店舗展開の有名料理店では その店の味を再現した 専用ダシの素が使われているという話もあります[05] … Continue reading

和食=ダシ味となり いまや本国日本も何でもダシ味になってしまいました 和食は味を加えるのでなく 引き算の技といわれます 素材の味を引き出すという和食の伝統は失われてしまうのでしょうか
料理に限らず 減塩をうたう梅干しや漬物などの塩蔵品がダシ味になってきました 塩によって熟成される味が忘れられそうです 甚だしいのは煎茶にまで化学調味料が使われることがあったほどです[06] … Continue reading

「味の素」の瓶を見かけることは少なくなりましたが 味の素の売上は落ちていない 加工食品にはほとんど化学調味料が使われているからです それらも(うま味調味料)ダシ味と言い換えています[07] … Continue reading
塩蔵品は本来保存のためです 加えて塩が馴れたころ新たな旨味が生み出されます 健康的な(?)減塩になったため 味を補う目的で人工ダシ味を加えるようになりました それだけならまだしも 保存料・防腐剤まで必要になってきます まったくもって本末転倒です

註釈

註釈
01 一体この連中は何を意図して こんな悪意に満ちたフェイク情報を流すのでしょう 日本文化を卑しめようとするのは単に舶来崇拝なのかな ワインをやたら崇めていますが おフランスにひれ伏している?
02 美味しんぼはろくに取材もしないで フェイクな情報をもっともらしく書くようです ワインは添加物を使わないとか 市販のマヨネーズが植物油と卵と酢と食塩だけで作られるとかです どんな文献を参考にしたのか すべて事実無根デタラメです ワインは酸化防止剤を始めとして添加物だらけです
03 厳密な意味でのヴィンテージは単年度産のものですが ワインは品質を均等にするため通常ブレンドして瓶詰めされます 収穫年度だけでなく多品種をブレンドしたり 他の土地で取れたものをブレンドするのが普通です 日本酒の桶買いと同じことをやっているわけです
04 砕米は要するに米粉(みじん粉)ですから 白糠になってしまいます 糠の重量で精米度を測るので 見かけ上の精白度に影響します また米粒が小さいほど麹菌の菌糸が 中心にまで入ってしまいがちです 過剰な精白は本来の吟醸づくりとかけ離れたものです
05 この頃の人工調味料の進化は凄まじいもので 本物より本物らしい味を作れます たとえば日本酒エッセンスなんかは 銘柄ごとの違いまで作り分けています(日本酒風味のケーキに本当の日本酒を使ったら 燗冷ましの出来損ないになるだけです)
本物よりチョッピリよく描く似顔絵と同じで 特徴を良い方向にデフォルメするのではないですか 実物とそっくりに描くと似ていないと言われてしまいます お椀の蓋を開けたら お出しの香りがプーンと なんかそうだと思います
06 夏目漱石が初めて玉露を飲んだ感想を書いていますが 爽やかで涼しい味だったそうです 昭和50年代から茶畑に窒素肥料を大量に使うようになりました アミノ酸ことにグルタミン酸の含有を増やすためです お茶に旨味が要求されるようになり まるで出し味のような煎茶や玉露がもてはやされたのです ついに味の素を添加した煎茶が流通することになりました
07 ついにダシがうまい煎餅まで現れる始末です タンパク加水分解物をまぶした(魔法の粉ですね) 亀田のハッピーターンあたりが嚆矢かもしれません そういう意味では亀田製菓さん先見の明があった
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清酒はなぜ加水するか

清酒はなぜ加水するのか(玉割りといいます) 簡単にいうとアルコール度数が高く濃い酒だからです 世界中に醸造酒があります ほとんどの酒のアルコール度数は5%から10%くらいです
執事(butler)の語源はフランス語の瓶(ワイン)係です ローマ帝国の宴会ではワインを水で割るのが執事の重要な仕事でした(宴会の進み具合で割合を調整するのが腕の見せ所だったらしい) 当時のワインは醪そのもの濁酒状態で飲みにくかったのです 貴族の宴会の時は玉割りしてから 漉したり上澄みを供したのでしょう[01] … Continue reading

日本酒(清酒)原酒は20度前後のアルコール度数があります それだけでなく非常に濃厚な味わいを持ちます[02] … Continue reading そのままでは飲みにくいので 水で割って販売していたのです(アルコール度数等を調整した一升瓶の酒は明治時代に登場しますが 昭和前半まで酒店で量り売りもしていました 店先で水槽に通い徳利を浸していたといいます)
この高アルコール・濃醇な酒質は 日本酒独自の並行複発酵という醸造法によります

他の国でも高アルコールの酒は求められました しかしビール・ワイン等の単行複発酵・単発酵では無理なので 考えられたのが蒸留酒です
また芋焼酎・泡盛等も並行複発酵ですが クエン酸が生成されるため 醸造した状態では酸味が強すぎ とても飲めるものではありません そこでいったん蒸留し寝かせる工夫が行われました[03] … Continue reading

ワインと日本酒の流通

猿酒ともいえるワインは 変質しやすいものでした ギリシャ・ローマ時代では さまざまな香草類等で瓶(かめ)のワインに蓋をして腐敗を防いでいました これがリキュールに発展していきます ビールにホップを入れるのも腐敗防止のためでした[04] … Continue reading
日本酒に特有な腐敗菌である火落菌は高濃度アルコールに弱いため 日本酒は高アルコール・濃醇になっていきました 各地に流通することができたので 江戸時代には樽回船という酒運搬専用船までありました

ワインが流通するのは 瓶詰めの技術やパスチャライゼーションという加熱殺菌(火入れですね) 酸化防止剤・保存料等の添加物が混入されるようになった近代からです
ワインの添加物は補糖(シャプタリザシオン)や補酸を初め十数種にも及びます 現在では着色料や香料も用いられていて 認可された添加物は数十種類あります(ラベル表示の義務はないみたいです というか多すぎて表示できない?)

シャンパンの補糖は2回行われ 最初は瓶内二次発酵のため 次に澱を引いたあと減った分を補うとともに 味を調整するためです(ドサージュ) 使われる液糖をliqueur d’expédition(出荷時のリキュール)なんて言いますが それは言葉の綾でリキュールを加えるわけではない 正直に言えば日本酒の醸造工程で加えるのと同じ醸造用糖類です しかも醸造時ではなく瓶詰めのときに加えます[05] … Continue reading

原料アルコールと純米酒

添加物といえば 日本酒の醸造アルコールが取り沙汰されることがあります[06] … Continue reading(風評の出処は漫画「美味しんぼ」のようです 相央暇人の神奈川地域情報参照) 醸造用アルコールは別名を原料アルコールといい 醸造過程で使用するものです 使用目的はいろいろありますが 主に桶ごとの発酵度合い調整のためです
これはもともと腐敗(腐造)防止のために 醸造過程で焼酎を加えた技術の応用です(柱造りといいます) 一般に芳香成分はアルコールに溶けやすい性質があります そのため柱造りは香味の高い酒ができました

吟醸・大吟醸酒は昔から伝わる杜氏の技ではありません 主に醸造試験場で開発された 新しい技術で醸し出される日本酒の最高峰です 複雑な味を佳とするワインと対極をなす 雑味のない洗練された繊細な味わいを持ちます[07] … Continue reading
本来の吟醸・大吟醸酒醸造は腐造ギリギリの長期低温発酵なので 原料アルコールが欠かせないのです また吟醸・大吟醸酒は吟醸香が特徴です この吟醸香もアルコール添加によって生まれます

記憶が定かでないのですが 吟醸・大吟醸酒は最初東北で作られたようです 低温発酵のために適地だったのです ときには醪桶の周りに雪を積み上げたりしたと聞きます
安定した発酵のためにはむしろ 常温から高温のほうがよく(ワインも常温発酵です) 酒造りの原初といわれる菩提酛(水酛)づくりでは夏季に仕込みが行われました

では近ごろ見られる純米吟醸・大吟醸はどうやって作るのか 吟醸・大吟醸のアルコール添加は腐造防止と吟醸香が目的です 昔ながらの純米づくりで吟醸香は出ません だから最近まで純米吟醸・大吟醸[08] … Continue readingというものはなかったのです
特定名称酒が定められる以前から作られていた吟醸・大吟醸は 鑑評会用の酒を市販したのが始まりです それまで鑑評会用に醸した酒の残りは 高品質であっても高価格をつけられず 他の酒にブレンドするしかなかったのです

知人に酵母会社の研究部門の方がいます その方が作った酵母はふわふわパン用の酵母なのだそうです ふわふわパン用・もちもちパン用と さまざまな酵母が開発されています
酒の酵母もいろいろ作られていて 最近は吟醸香を生み出しやすい カプロン酸エチル高生産酵母ができました この酵母のおかげで純米酒でも吟醸香が作れるようになりました これが純米吟醸・大吟醸ですね

食品の添加物は大きく二つに分けられます 製造過程で使われるものと製品になる時点に加えられるものです 同じ醸造製品の醤油にもアルコールが添加されますが 醸造工程ではなく流通時の腐敗防止・保存のためです[09] … Continue reading
醸造工程の原料アルコール添加も カプロン酸エチル高生産酵母も 日本酒醸造技術の一つです それぞれ特徴があり持ち味があります 飲んだだけで醸造工程や原料の違いを見極めるのは かなり難しいことです(海原雄山の味覚は見事に利き分けたようですが?)

清酒造りは手間がかかる

酒造りで最も大変な作業が山卸と消泡でした 山を卸すとは半切りの蒸し米と麹を櫂ですり潰すこと[10] … Continue reading また発酵の最初3日位は不眠不休で泡を消さないと 桶から溢れてしまうほどだったそうです(泡盛という名前はおそらく発酵の様子から来たと思います)
原料アルコールの他にも 醸造方法の工夫で省力化が図られました とくに酛(酒母)作りの改良は大きいものでした 山卸が廃止され「櫂で潰すな麹で溶かせ」 自動消泡機が使われるようになり さらに低発泡性の酵母もあります

酛は発酵のスターター 掛米は添・(踊)・仲・留と分けて加えます 加える量や温度 回数・タイミングは求める酒質で違います これが糖化と発酵を並行して行う日本酒の醸造法です
かつての清酒は濃醇なほどよい酒とされました 究極の濃醇を求めたのが味醂です あまりにも濃厚すぎて生(き)で飲むことができません そこで焼酎で割るようになりました 柳蔭(本直し)といい夏の暑気払いに飲むものでした

酒を割る文化

こういった割る飲み方は 今の居酒屋文化に引き継がれているのかもしれません 江戸時代の居酒屋も樽で原酒を仕入れ水で割って客に供していました 鎌倉河岸の豊島屋が始まりといいます ローマの宴会ではありませんが 割る加減で店の評判が変わったりしたようです 割り水が多すぎると金魚酒などと言われます
豊島屋では酒菜に塩っ辛い田楽を出していました 田楽が串に刺してあるのは 立ち飲みなので片手に枡酒を持ち もう一方の手で田楽を持たねばならぬからです 肴というより摘みというべきか 枡で酒を出したのは量り売りの名残であり 酔っ払って仮に落としても割れないからです

昭和初期の頃までの居酒屋では 樽で原酒を仕入れ店で割って出している処もあったそうです 樽の上と下では味わいが変わり下の方の酒は「生憎と樽底でございますが」と断って出したといいます[11] … Continue readingこのような店では専門のお燗番がいます
また九州の居酒屋では焼酎を出しますが 燗を付けるときは前割りといって予め水で割った焼酎を用います いわゆるお湯割りは 大衆食堂でテーブルの上に置いてあるヤカンのお茶で 客が自分で焼酎を割ったのが始まりと聞きます

日本酒に使う原料アルコールはようするに甲類焼酎です 戦後の一時期合成酒や三増酒が出回りました アルコール臭を紛らすため味の素を耳かき一杯入れるという飲み方があったようです 今盛んに飲まれている酎ハイなんかはこれと同じことですね

酒造りと税金

酒造りは租税とのせめぎあいでもありました 造石税・蔵出し税・等級制などです 1992年に酒の等級制が廃止されました 等級制はいわば税金のための制度です 特級酒が高かったのは要するに税金が高いためです[12] … Continue reading 税金は取りやすいところから取るのが原則ですね
昔一升瓶とビール瓶が回収されていたことをご存知の方もいらっしゃると思います 一升瓶とビール瓶は酒造メーカーが所有するものでした メーカーに戻ってきた空き瓶を数えて税額の精算をしたらしい 透明が2級酒で茶色が1級酒 特級酒は緑色の瓶だったか(詳しいことはわかりません)

密造酒が犯罪とされるのは税金を納めていないからです 周知のように江戸時代の行政(藩)の財政は米に頼っていました 年貢米だけでなく酒にも税金をかけていたのです 明治以前は誰でも自由にドブロクを作ってたなんてことはありません
酒と税金の関係は今も続いていて ビール・発泡酒・第三のビールの税額が代表的な例でしょうか これまでも日本の酒税は世界一高かったのですが 6月にまたまた値上げしました
税務署による酒の生産高の管理は苛烈を極めています 原料や工程で使用する水の量まで詳細な記録を求められ 蔵出しは1リットル単位で計測します[13] … Continue reading まさに苛斂誅求そのものです

原料アルコール添加と混同され 誤解の元となっている三増酒も 第二次世界大戦後の食糧難・米不足で 酒造税の不足を補うため税務署の主導で造られました 戦時中の経済統制で酒蔵が統廃合され 各地の酒の銘柄や特徴が失われました 税務署は税金のために品質より蔵出しの数量を求めたのです[14] … Continue reading
戦後になっても米は長らく政策の道具でした(江戸時代と変わらないですね) 酒米も配給制でしたから 品質どころか量を確保することもできなかった アルコール添加云々の前に まともな酒を作ること自体ができなかったのです 米不足は第三国人によるヤミ米(その分配給米が不足する)のためです そこへ不法在留朝鮮人が朝鮮麹を密輸入し密造酒(バクダン)が横行 酒税を徴収できなかったという事情があります
いい米は第三国人によるヤミ米へ回され 残りが配給米となります それも食用が優先ですから酒はくず米で作るしかない 純米酒はとても飲めないような品質になってしまいます むしろ合成酒・三増酒のほうがよかったりしたのです

註釈

註釈
01 ギリシャ・ローマ時代のワインは 甕に葡萄の実を直接いれ足で踏み潰すという造り方です イタリアのカッラーラという都市でワインの原種(古式醸造?)があります まるでトマトケチャップのようにドロドロしたものだそうです 日本酒でいえば醪=ドブロクです このままでは飲みにくいいので 水で割って上澄みを酌んだのです これは今でも気取った高いワインを飲むときの デキャンタージュという儀式に残っています
02 日本酒特有の飲み方に燗酒があります 江戸時代では燗をするのが普通で 冷や酒は悪酔いするとか体に悪いとされていました これも濃醇な酒の味を和らげる意味があったのです 夏の燗酒はなかなかいいものです
03 ブランデーの銘醸地コニャック地方は良質のワインができなくて 苦肉の策として酸っぱいワインを蒸留したとの説もあります 瓶に入れて熟成した泡盛古酒(クースー)はブランデー以上の香味豊かな酒です
04 秋田県大館市で ニワトコの実を発酵させた 5500年前のワイン醸造の遺跡が見つかりました これにも細長い木の葉が使われています 種類はよくわかりません ニワトコワインを漉すとともに変質防止の意味があったかもしれません 土器で発酵させたのでしょうが 草を編んでカゴに敷き実を潰して果汁だけを使ったようです
05 紛らわしい言葉が グレーンウィスキーです ウィスキーと言いますが 実体は連続蒸留で作った醸造用アルコールです 様々なモルトをブレンドして(当然桶買いしているでしょう)玉割りし アルコール度数を調整するのに使います ブレンデッドウィスキーは三増酒ニ増酒なのです 
上方から下った酒は江戸で玉割りして小売りされますが 問屋や小売り酒店で関東の地酒とブレンドされることが多かった ブレンデッド日本酒ですね そこで後発の灘五郷の蔵が使ったキャッチフレーズが「灘の生一本」です
06 戦後の米不足時代に増量のため アルコール添加の日本酒が作られました アルコール添加は昔からある技術です 江戸送りの酒には腐敗防止のため 専用の無臭焼酎が添加されていました
日本の焼酎はウィスキーと違い一回蒸留です 大正時代ころからパテント・スチル・アルコールを添加しはじめて ついに純アルコール溶液・希釈アルコールになったのが甲類焼酎です 酎ハイを飲んでいながらアル添日本酒がどうとかいうのは おかしな話です
07 吟醸・大吟醸はあまり米を溶かしません 搾った酒粕に米粒が残るほどです 味の広がり(旨味・甘味)を制限し引き締まった酒のためです 狙う味の帯域で酒質が変わってきます 味の膨らみを求めるとふくよかな酒となります
08 本来の吟醸・大吟醸は酒精により吟醸香が生まれ 純米吟醸・大吟醸は酵母により吟醸香を作り出します また酵母で香りを作った酒は味の変化(酒のダレ)が早いといいます
09 とくに減塩の醤油は保存性が悪くなるので アルコールや他の保存料が必要になります 梅干しなんかでも同じです
食品の製造工程で加えられる添加物はナトリウム化合物が主です これは後工程で中和することになっています 酒の醸造でも原料アルコールがそのまま最終製品に残るわけじゃない
10 櫂といっても杉の木でできた身長ほどの丸太棒です 麹と米は水分を吸って固くなっています 少しぐらいの力では突き崩すこともできません 最初は手で崩してから櫂で潰していたようです この時決して捏ねてはいけません
11 明治の頃までは杉木酒樽での流通が主でしたから 本当に樽底は木香が強かったようです 場合によってはジンのような香りがしたといいます いわゆる下り酒や富士見酒は 波に揺られることで 樽香が緩和され円やかになったのかもしれません
12 平成元年に「清酒の製法品質表示基準」が定められました 清酒の名称は8種類ありますが 原材料や精米歩合等の区分けです 法律名通りラベル表示の基準であって 等級や品位を表すわけでない
13 呑み切りなど蔵内の試飲はよいのですが(製造工程の誤差「欠減」に含まれます) 蔵の外に1升分を持ち出せば 代金の授受がなくても課税されます 貯蔵桶の目盛りと原材料・糠の量・酒粕の量・使用した水量が合わなければならないのです
14 三増酒は大蔵省の醸造試験場が理化学研究所と共同で作ったものです 理研の鈴木梅太郎が発明した合成酒の応用です 戦後の米不足の折 酒の供給量を確保するためですが それはすなわち酒税の確保が目的でした 三増酒を酒造業者の責に帰するのは見当外れです 税務署であって税務所でないことに注目してください 庁・署と名の付くお役所は捜査権などの強制権を持ちます いわゆるマルサですね
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