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カテゴリー: ブランド・ブランディング

ブランディングは一朝一夕にできません

「100日後に死ぬワニ」騒動を引き起こした ベイシカという会社 キャラクター商売のようですが 版権管理とはちょっと違うみたいです ホームページを見ると キャラクターを使ったブランディングを標榜しています 
自慢なのがスピード感 社長インタビューによれば ひとつの案件に1か月しかかけないそうです たしかに「100日後に死ぬワニ」公式グッズショップの開店は 原作終了の翌日という速さです 実態はイベントプロモーターですか
きくちゆうきさんの原作は タイトル通り100日間twitterに連載していました 普通に考えれば 多方面への展開は連載開始前から周到に準備していたと思われます しかし作者によると そうではなくベイシカがコンタクトをとってきたのは 連載開始後1か月経った頃だそうです
おそらく原作の人気に当て込み ひと儲けしようという 山師的発想で原作者に近づいたのでしょう ブームは一過性のものだろうから 今のうちにという感覚です だとしたら 原作者に対して失礼なことですし オーディエンスを愚弄しています この拙速なやっつけ仕事が 嫌悪と反感を呼んだと思います

原作を見たところ 無常観といいますか死は特別なものでなく 日常に遍在するがテーマと私は受け止めました 生きることは即ち 死に向かっての歩みです 今日一日生きたら 死に一日近づくのです
ブランディングは一朝一夕にできません 地道な毎日の積み重ねです お手軽なゆるキャラみたいなものを作れば ブランドのイメージが上がるなんて 安易なものじゃない
キャラクターにも様々あって ストーリーに従い成長するものと安定した存在があります 「100日後に死ぬワニ」はどうなんでしょうか

死んでしまったワニのキャラクターを どうやってマネタイズするのか 今までになかったケースです しばらく沈黙して七七日後に 新たなストーリーが始まるとかすれば面白かったかも スピード感はまったくありませんが 人の噂も七十五日といいます 49日なら忘れられないでしょうし 100日後とも整合性があります

東京と大阪に4月1日からCafeまで開かれるそうです 話題を利用するだけという魂胆が見え透いた この矢継ぎ早のキャンペーンが 今後どのように推移するか注目したいですね 版権管理とかキャラクターを育てるという 長期的視野はまったく持たない連中です 刹那に生きるのも無常といえば無常観かもしれませんが
TVとのタイアップで話題を作り客を呼ぶ手法は 結構うまくいってます 作品のファンであるユーザーでなく 話題性だけで買う浮動層がターゲットなら これはこれで案外成功するかもしれません 以前にも ブログ発の小説を書籍化したりTVドラマ化して 一山当てたというのがありました でもかなり時間をかけていた気がしますけど

このようにtwitterを使ったマーケティングで思い出すのは グルーポンですね あれも日本では光通信という詐欺商法会社(企業舎弟?)が展開していました
本家アメリカでは フラッシュマーケティングと言われていたようで まさに刹那主義の一発屋手法です 期間限定の割引は古典的なものですが twitterを使ったのが目新しかった

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売り上げ・信頼関係

ブランディングの目的は 一時的な売り上げを求めるより[01] … Continue reading お客様と永続的な信頼関係を築くことです なにも目新しい考えではない お得意さま(常連客・ひいき客)になっていただければよいのです
そのためには 製品・サービスが高品質であることが第一 次に独自性を打ち出すことです 独自性といっても他社との違いや優位点ではありません 差別化だとか付加価値なんて 物真似の裏返し他を見ての比較にすぎない オリジナリティーとは無縁の施策です

居酒屋

飲食店(居酒屋)の例です 2軒の居酒屋があります 具体的に書けないのですが それぞれに特徴を打ち出しています
1軒は産地直送が特徴です しかも お客様からの提案・協力で実現したことです 産地から選り選った食材が届き 店主の包丁の冴えで 素晴らしい料理が提供されます 以前は酔客を断ったりもしたようです(居酒屋なのに)
もう1軒の店は地産・地消を心がけています どの地域でもよいものを生産している方はいます それを地元ならではの付き合いで仕入れるのです もちろん店主の食材を活かす料理の腕前は確かなものです

この2軒に共通しているのが ひいき客・常連客を大事にする点です 「インターネットの評価で来る客は1回限りが多い」「一見の客に値引きなんかしたくない なじみ客にこそサービスしたい」「SNSの口コミに店のことを書かないでください」
どちらの店も 店主一人とアルバイトで切り盛りしていて 振りの客が押し寄せると手が回らない という事情もあります TVのタイアップなどで上辺だけの評判を煽り 興味本位の客を集める商法とは対極をなす姿勢です

初志貫徹

これらの例は 個人経営だから成り立つのかもしれません しかし企業の大小に関わりなく 大切なのは確固たる信念です どんな商品を提供したいのか なぜその商品を作るのか 顧客にいかなる満足を届けるのか
どの企業も 志をもって事業を始めたはずです 初志を貫徹することが大切 創業時の心構えは 代々すべての従業員が共有しなければなりません

共有するためには コミュニケーションが欠かせません 従業員教育でもありますが 社是・社訓の唱和や社長の訓話では 一方通行でコミュニケーションが成り立たない
さらに お客様とのコミュニケーションが加わって ブランドは育っていきます ブランドを育てるのは お客様と従業員の両方です
事例の居酒屋さんも 客とのコラボレーションで独自のスタイルを築きました 客に商品・企業のファンになってもらうのです 製造メーカーなど客と直接の接点はなくとも 製品を通じて関係を築くことはできます

即席カレー

愛知県にある株式会社オリエンタルは昭和20年 最初に即席カレーを作りました 販促は宣伝カーで全国を巡り試食してもらったそうです TV受像機が一般に普及するとTVCMを盛んに流していました
オリエンタルカレーは 黄色くてあまり辛くない 母の手作り風の味です それはいまでも変わらず 昔の味を守り続けています[02] … Continue reading
オリエンタル製品のパッケージには「オリエンタルがっちりプレゼントキャンペーン」応募はがきが入っています キャンペーンといっても通年やっているようです

箱にあるオリエンタル坊やのイラスト3枚を貼り付けて応募します 毎月500名に景品が当たりますが はずれてもレトルト製品が1点送られてきます 発売当初の試食の精神がまだ生きているのですね
特に挨拶文中のお願いがいい お客を巻き込んでのコミュニケーションです こういうお願いは率直にストレートに頼むべきです 製品そのものを媒体(オウンドメディア?)にしたコミュニケーションです 顧客に届けばいいのです リーチ率100%
このキャラクター(オリエンタル坊や)も初期の頃から変わらないのではないか 昭和30年代にTVCMをやっていましたが アニメーションバージョンがあって そこに登場していたように思います 確かオリエンタル坊やが椰子の木に登ったりするやつ 映像は残ってないでしょうね

註釈

註釈
01 こじつけた無理やりなイベントで集客するのは 疲弊を招くばかりです クリスマスケーキの頃はまだ お菓子も豊富でなく年に1度の微笑ましいイベントでした バレンタインデーあたりから方向性がおかしくなり 恵方巻きにいたっては馬鹿げたふるまいとしか言いようがない たしか関西のセブン・イレブンが始めて TVのタイアップで全国に広まったものです
恵方巻きの廃棄で問題になるのも実はコンビニです 自店で作って売る場合は客の動向を見て調整できますから さほど無駄を出すことはありません また売れ残りは投げ売りできます
コンビニでは製造メーカーが一括して作りますが 製造数を自社で予測するわけでない 足りなくなるのは許されず材料は予め多めに用意します 余った食材は自社負担で廃棄しなければなりません 店舗(フランチャイジー)は買い取りで 売れ残った恵方巻きは自店負担で廃棄することになります 本部(フランチャイザー)は余った食品を廃棄なんてしてませんよと言えるわけです
02 ライスカレーの場合 カレーはご飯の上にかけます その上に中濃ソースをかけ 匙ですくって食べます この時混ぜてはいけません ご飯とカレーとソースが重なったところを味わうのが ライスカレーの食べ方です 新宿中村屋のカリーは ご飯とカレーさまざまな薬味が別々に盛られます これを混ぜながら食べるのが純印度式の由来です
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野沢菜漬 ネーミングとブランディング

商標でないネーミング

野沢菜・広島菜・高菜が三大漬け菜[01] … Continue readingという風説があります 誰が言い出したか どんな根拠かは不明です それがもっともらしく流布されている 高菜は古くからの呼び名ですが 野沢菜・広島菜は地名を付けたもので近年の呼び方です
広島菜の名は明治後期かららしい 野沢菜といわれるようになったのは ごく最近のことです 野沢温泉の観光キャンペーンで 野沢菜漬けのネーミングができたといいます 温泉地のキャンペーンが成功したかどうか知りません 副次効果として野沢菜漬けが全国に知れ渡ったのは確かです[02] … Continue reading
野沢菜の生産量は長野県が過半数を占めます でも野沢で冬期の漬物に使われるのは 徳島県産だそうです(野沢温泉の温泉水で洗えば 野沢菜漬けだなんて言い訳してますが)

本名はカブ菜

隣接する新潟県でも昔から このアブラナ科の菜っ葉が漬け物にされていました もっぱら漬け物用なので「漬け菜」といってましたが 別名を「カブ菜」ともいい 根っこには小さな蕪が成っていました
漬けるときは 固い蕪の部分を少し削り落とします ちょうど京都のスグキ漬けのようなやり方です カブ菜漬けは茎を食べるものだからです(スグキも酸っぱい茎からきたのではないでしょうか) 確かなことは分かりませんが スグキの近似種であるカブ菜は 京都から伝えられたとも言います
京の人たちは相変わらずスグキ漬けと言ってますが 新潟県でも最近はカブ菜漬けを野沢菜漬けと言うようになりました いま漬物用のカブ菜を収穫するときは 蕪根を残して葉柄だけを刈り取ります 野沢菜の名が一般的になってから 根に蕪があることを知らない人が大半かと思います

塩漬けが正当

野沢菜であろうと広島菜であろうと高菜であろうと 本来は塩漬けです いまの地名を冠した漬け菜は 醤油ベースの調味液に浸したものが主流です 浅漬けと称していますが 漬け物とは言い難い和風味マリネですか いわゆるサラダ感覚なんでしょう
カブ菜は初冬に塩漬けします 乳酸発酵し塩味が馴れ酸味が出たときが漬け菜(カブ菜漬け)の味です 菜から出た水分が上がってきて 表面には氷が張っています 冬のあいだ発酵はどんどん進み 時間が経つにつれ味わいも変わります

古漬けの味

雪が融けて春先ころには酸っぱすぎて そのままでは食べられないほどです そこで古漬けの漬け菜を水で煮て 酸味と塩味を和らげます 新潟の郷土食である煮菜(にいな)です 料理ともいえない質素で簡単 そのままの名称です 煮るときかなり匂いますけど
煮干しを使って煮たり 打ち豆その他を入れたりと アレンジする家もあります 私はただ水で煮ただけのものが好きです 塩と乳酸発酵で引き出された カブ菜の持ち味は 驚嘆するほど奥深い旨さです 人工調味液なんかでは出せない 滋味を持つ一品です

出し味の野沢菜漬けと称する浅漬けは 調味液に浸しただけですから 時間が経っても酸味は出ず 塩も利いてないので 発酵ではなく腐敗するだけです これを煮てはいけません 極限まで発酵した乳酸菌の力あればこその煮菜です[03] … Continue reading

註釈

註釈
01 三大〇〇 三位一体 三羽烏 三はそれぞれ並立するイメージがあります 三角形や三点支持は安定していますから 昆虫の六本足も三本づつの三角形です(三角を組み合わせた六芒星の形) 二だと 両雄並び立たずとか竜虎相搏つといった 対立の構図になります 三つ巴の争いなんてのもあるか
02 野沢菜は商標登録されてないと思います このように地名を冠したネーミングが一般に使われれば ブランディングとなります 「くまモン」は商標登録されていますが 使用料がいらないため 広く使われることとなりました
古くはディズニー近年はサンリオなどの キャラクター商法と反対の行き方です マネタイズするのが目的でないので 直近の利益を求めることはできません
03 古漬けを料理に使うのは珍しいことではなく 高菜の塩漬けを油で炒めてもうまいし 中華料理によく使われます ドイツの郷土食ザワークラウトは 鯉・鰻の煮付けやシチュー・炒めものなど 旨味・酸味・塩味の漬け汁とともに さまざまに利用されます
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