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和食と清酒は日本の文化財

日本と西洋の料理

日本料理は控えめで自己主張するものではない 素材の確かさとその良さを引き出す技を さりげなく見せるだけです 刺身は漁師・市場仲買の魚の手当から始まり 板前での柵取り熟成そして包丁の引きで完成します
日本酒も米作りの姿や酒造りの労を見せることなく 澄み切った佇まいで 料理の引き立て役として 静かに寄り添います
料理と酒ともに野性的な互いの個性がぶつかり合う ワインのマリアージュとは考え方が根本的に異なる 和の心といったらよいか 止揚ではなく調和を求めます 1+1は2になりますが 1✕1はどこまで行っても1のままです[01] … Continue reading
色盲と同じように味盲があり 西洋人の30%日本人は10%ほどが 一定の味覚を感じ難いそうです 野性味のあるワインに慣れたヨーロッパの人たちが 精妙な日本酒の味を理解できないのも無理ありません

料理と酒

日本料理の特徴であり 和食味付けの基本となるのが醤油と味醂です とくに味醂は日本独自の調味料です[02] … Continue reading 坂口謹一郎博士によると 味醂や砂糖の使用で料理が甘くなるに連れ 清酒は辛口になっていったそうです 江戸時代中期に八百善と並び江戸料理の双璧とされた平清は 甘辛く濃い江戸の味だったようです
平清は会席料理の最後に潮汁を供しました 甘辛い料理とのバランスを考慮したものでしょう 潮汁は本当に海水を使ったかもしれない 昆布出しは使わないはずだし 鰹節の風味は鯛の味を邪魔します
辻留の辻嘉一氏がなにかに 人が美味しいと感ずる塩加減は 血液の塩分濃度だと書いておられました 血液の塩分は両生類から哺乳類が分化した頃の海水に由来します 江戸時代には海水の塩分濃度は上がっています 玉川上水の水で調整したかも

料理と水

京菊乃井の東京店では 昆布出し用の水を京都から運んでいると聞きます 東京の水では思うような昆布出しが引けないのだとか 塔ノ沢温泉の環翠楼に泊まったとき ご飯のあまりの旨さに驚きました 女将に聞くと地所内の湧水を使っているとのことです 水の違いで ここまで米の味を引き出せるのかと認識した次第です 和食と清酒は米と水の饗宴(共演)ですね 日本風土の文化です
ヨーロッパとくにフランスの内陸は水が悪いと聞きます 醸造に水を使わないワインが主になるのは道理です ソムリエの用語集があります 森の木の実や狩猟に関する語が多い 日本で言うなら縄文ワインですか フランス・イタリアの海辺ではアクアパッツァやブイヤベースがあります これは言ってみれば潮汁ですね いずこも風土に根ざした料理と酒です

註釈

註釈
01 新潟の淡麗辛口の酒を指導した嶋悌司氏が「酒の香味に大切なのは全体の調和、それは酒造りに携わる人の和から生まれる」と語るのは まさに日本の文化を表しています
02 中国の酒に香雪酒という味醂に似たものがあります これは飲用で料理には使いません 料理に使う甘味は甜酒醸(チュウニャン)です 甘酒に近いもので味醂の洗練とはかなり異なります
日本の伝統的な味醂を造る酒蔵がいくつかあります それらは飲用に適したリキュールです 柳陰・本直しにはいいが料理向けに造る味醂は途絶えていました この現状を見て菊姫が江戸時代の味醂を復活しました 菊姫 本みりん 純米は料理用の味醂 料理に使って生きます

カテゴリー: 日本の伝統・本流