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情報心理戦とマーケティングの戦理・戦略・戦術・戦技 投稿

御神酒

神に酒を供えるのはなぜか 荒ぶる神を鎮めるため 神の託宣を聞くため 御饌(みけ)のうち酒はことに味がよく 霊妙な心理作用をもたらします いつかおみきといえば酒のことになりました
神を鎮めるには 酔い潰してしまうのが手っ取り早い? 下がり物の酒を頂いて神憑りになる? ただ酔っぱらうのは大蛇だったり鬼ですね 人格神は下戸のようです
卑弥呼が鬼道を行う際飲んだのは どんな酒だったのか 縄文ワイン 米から造った天甜酒 焼酎だったかもしれません 平安時代すでに酒で酒を醸す貴醸酒が造られています 蒸留酒が文献に表れるのは16世紀のようですが いつ頃から作られたかは不明です

八塩折の酒

八岐大蛇の話に出てくる酒は 八塩折の酒とか衆果の酒とか書かれています 果実を集めて作った酒ならワインですね 八塩折がよく分からない
記紀では濃い酒となってます 濃醇な貴醸酒は平安時代に「しおり」と記されているようです しかしこれでは衆果との整合性がない だいたい米の酒との記述はないのです[01] … Continue reading
八俣大蛇が酔い潰れるということは アルコール度数の高い酒です 私は蒸留酒ではないかと思ってます
縄文ワインを蒸留したのか 酒精強化ワインだったのか 焼酎に果実を合わせて リキュールとしたのか
各地の焼酎は主に米麹を酛にし サツマイモやサトウキビを使います 果実が原料とすると栗焼酎か キルシュヴァッサーのような酒だったかもしれません[02] … Continue reading
それまでもヤマタノオロチに 酒は供えていたはずです 縄文ワインであったのなら アルコール度数はかなり低い
今までにない美味い酒だと 飲みすぎてしまったのです いずれにしてもその製法は途絶えて 700年代には伝わっていなかった その後米の酒が主流になった経緯もわかりません

芋粥

芥川龍之介の小説と原話の今昔物語によれば 芋粥は山芋を甘葛でさっと煮た粥となっています 粥とはいえ米は使いません 山芋は東南アジアでよく食べられる ヤム芋に相当します また里芋は山に対しての名ですが 太郎芋と呼ぶ地域があるそうです(タロ芋は里芋の仲間です)
奄美地方にミキと呼ばれる発酵食品があります 今は米とサツマイモで作ります かつては山芋・里芋などが使われ 3日間発酵させるので 三日ミシャクと言われたそうです
ミキは甘酒のようなものです ちょっと無理がありますが 昔のミキは芋粥に近いか 芋粥に甘葛を使ったのは いつ頃からか不明ですが 元々は発酵によって 甘味を出したのかもしれません
ミシャクの語源は分かりません 諏訪大社に伝わるミシャグジ伝説との関連はあるでしょうか
ミキはお神酒に通じますが 神社で供える酒は神饌・御饌(ミケ)の一部であり おミキは酒に限定されてないのです

米の酒

お神酒は4種類あります いずれも米から造られます 伊勢神宮ではすべてを供えるそうです 中に醴酒と呼ばれるものがあります 醴酒は甘酒とも濁酒とも言われます ミキは芋を使った甘酒でした 米の醴酒は縄文芋文化と弥生米文化の習合から生まれたか
口噛酒は火を使わない特殊な作りです 生米をスターターに使う菩提酛(水酛)の始まりかもしれません 日本の酒造りは神に供えた米飯に 黴が生えたところから始まりました 麹菌が付き糖化した米飯を「カムタチ(カビタチ)」といいます 今の酒造と同じ散麹(バラ糀)の様子を表す言葉です 醸すの語源は黴立つなのです[03] … Continue reading
天舐酒はカムタチを用いた甘酒(醴酒・一夜酒)でしょうか[04] … Continue reading 甘酒に酵母を合わせてアルコール醗酵させると酒になります 最初は野生酵母が作用したのだと思われます 日本酒が神社仏閣で醸され 御神酒として供えられる由縁です 縄文時代には土器で煮炊きしていました 生米を噛んで放置していたら酒になったは不自然です 乳酸発酵させスターターとして用いたなら分かるが 全量を口で噛むなんてあり得ない 酒より飯が先のはずだし 弥生時代に生米を食べていたとは考えられません[05] … Continue reading

註釈

註釈
01 ヤマタノオロチが飲んだのは 八醞折の酒とも集果の酒八甕ともなっています この八は八岐大蛇に掛けたもので そのまま8回醸した貴醸酒とするのは疑問です ちなみに岐が8なら頭は9つです 集果の酒は9甕用意しなければ足りない
02 泡盛の起源がアラックだという解説が見られますが ココヤシ酒等は天然酵母で勝手に発酵します ワインと同じ猿酒です 穀物で酒を作るには麹と酵母を人工的に加える必要があり 泡盛とは製法がまるで違います
03 私は音韻論は分からないので私見ですが 神立ち(かみたち→かむたち→かびたち)黴立ち と変化したのではないでしょうか 醸すは雰囲気を醸し出すといった使い方をします いわば空気感のようなものです カムタチは何処からともなくやってきます また物議を醸すという言い方は 発酵の様子に似ているかもしれません(かむたち→かむたつ→かもす)と見るのが順当であろうと思います 噛むが醸すに音韻変化はしないでしょう
04 木花咲耶姫が天舐酒を作りました 巫女が米を噛んで糖化し発酵のスターターにするのは これが由来でしょう 神に捧げる酒造りは女性の仕事なのです 中世に至って産業化するに従い 男性が酒造りを担うようになります
05 宮中で行われる新嘗祭に白酒と黒酒が供えられます 白酒は清酒です 黒酒はこれに臭木の灰を混ぜたものです 昔の酒は酸度が高かったことから 中和するためです なお酒造りの際に米を搗く(精米)のは四人の女の人の仕事です おそらく縦杵と搗き臼を使うと思います 月の兎の姿ですね 生米を噛むのは女の人ですから その伝統を引き継いでいるのでしょう
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流れに棹さす?

「流れに棹さす」の出典が分かりません 用例も見たことないが慣用句ということでしょうか ならば揚げ足取りは無用なのですが
小型の川船が桟橋から離れるときは 水棹を突いて動かします 瀬に至れば櫓を入れて漕ぎます 渡しなどで川を横切る場合は 川上に向かって斜めに船を進めるのが決まり 時代劇でおなじみのシーンです
石松三十石船の古い映画があります この三十石船は淀川を伏見に向けて上ります 石松と江戸っ子のやり取りの間に 水棹を押しながら舳から艫へ 船縁を歩く姿が見られます 流れを遡るときは棹で水底を突いて進むのです
下りのときは櫓を入れて流れに乗ります 浅瀬を下るときも水棹を使いますが これは岩などにぶつからないよう むしろ減速のためです
船を人力で動かす道具は ほかに櫂があります 日本の川は幅が狭く急流が多いので 軍船の安宅船以外には ほとんど使われません
櫂→櫓→水棹の順で難易度が高くなっていくそうです たしかに棹一本で船を操るのは難しいことでしょう 舵のない川船は操船のため棹を使うことはあっても 船脚を早めるため棹で水底を突くことはしません
「流れに棹」だったら棹を用いて流れに向かうと 流れを見極めて棹で操船するの ふたつの意味がありそうです なので流れに逆らうも誤用とは言い切れません
文化庁のページを見ても「流れに棹さす」の用例は見当たらないし 水を差すと間違えている人はたぶんいないと思う 時流に乗るという意味で使いたいならば 追風に帆かけてシュラシュシュシュの方がいい 石松が乗った金毘羅船は百石積の内海用なので 帆掛け船です
もしかしたら夏目漱石「草枕」の冒頭 情に棹させば流される から来ているのでしょうか これは情に流されると流れに棹を引っ掛けた言い方で 情にほだされるといった意味合いです 流されるのであって流れに乗るということではない

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和食と清酒は日本の文化財

日本と西洋の料理

日本料理は控えめで自己主張するものではない 素材の確かさとその良さを引き出す技を さりげなく見せるだけです 刺身は漁師・市場仲買の魚の手当から始まり 板前での柵取り熟成そして包丁の引きで完成します
日本酒も米作りの姿や酒造りの労を見せることなく 澄み切った佇まいで 料理の引き立て役として 静かに寄り添います
料理と酒ともに野性的な互いの個性がぶつかり合う ワインのマリアージュとは考え方が根本的に異なる 和の心といったらよいか 止揚ではなく調和を求めます 1+1は2になりますが 1✕1はどこまで行っても1のままです[01] … Continue reading
色盲と同じように味盲があり 西洋人の30%日本人は10%ほどが 一定の味覚を感じ難いそうです 野性味のあるワインに慣れたヨーロッパの人たちが 精妙な日本酒の味を理解できないのも無理ありません

料理と酒

日本料理の特徴であり 和食味付けの基本となるのが醤油と味醂です とくに味醂は日本独自の調味料です[02] … Continue reading 坂口謹一郎博士によると 味醂や砂糖の使用で料理が甘くなるに連れ 清酒は辛口になっていったそうです 江戸時代中期に八百善と並び江戸料理の双璧とされた平清は 甘辛く濃い江戸の味だったようです
平清は会席料理の最後に潮汁を供しました 甘辛い料理とのバランスを考慮したものでしょう 潮汁は本当に海水を使ったかもしれない 昆布出しは使わないはずだし 鰹節の風味は鯛の味を邪魔します
辻留の辻嘉一氏がなにかに 人が美味しいと感ずる塩加減は 血液の塩分濃度だと書いておられました 血液の塩分は両生類から哺乳類が分化した頃の海水に由来します 江戸時代には海水の塩分濃度は上がっています 玉川上水の水で調整したかも

料理と水

京菊乃井の東京店では 昆布出し用の水を京都から運んでいると聞きます 東京の水では思うような昆布出しが引けないのだとか 塔ノ沢温泉の環翠楼に泊まったとき ご飯のあまりの旨さに驚きました 女将に聞くと地所内の湧水を使っているとのことです 水の違いで ここまで米の味を引き出せるのかと認識した次第です 和食と清酒は米と水の饗宴(共演)ですね 日本風土の文化です
ヨーロッパとくにフランスの内陸は水が悪いと聞きます 醸造に水を使わないワインが主になるのは道理です ソムリエの用語集があります 森の木の実や狩猟に関する語が多い 日本で言うなら縄文ワインですか フランス・イタリアの海辺ではアクアパッツァやブイヤベースがあります これは言ってみれば潮汁ですね いずこも風土に根ざした料理と酒です

註釈

註釈
01 新潟の淡麗辛口の酒を指導した嶋悌司氏が「酒の香味に大切なのは全体の調和、それは酒造りに携わる人の和から生まれる」と語るのは まさに日本の文化を表しています
02 中国の酒に香雪酒という味醂に似たものがあります これは飲用で料理には使いません 料理に使う甘味は甜酒醸(チュウニャン)です 甘酒に近いもので味醂の洗練とはかなり異なります
日本の伝統的な味醂を造る酒蔵がいくつかあります それらは飲用に適したリキュールです 柳陰・本直しにはいいが料理向けに造る味醂は途絶えていました この現状を見て菊姫が江戸時代の味醂を復活しました 菊姫 本みりん 純米は料理用の味醂 料理に使って生きます
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